作:近藤せいけん
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平成21年度厚木市民ミュージカルの原作として使用されました「大山の天狗さま」が絵本になりました。
(原作とミュージカルは多少異なる内容となっております)
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民話のふるさと~ゆあ企画~
■厚木市妻田北3-15-1
大黒屋ビル 1F 
TEL:046-296-2550
MAIL:konndouseikenn1@yahoo.co.jp
 

 

A4サイズの絵本です

中はこんな感じです

読みたいお話をクリックして下さい(下線のないものは準備中です)
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***民話***
大山の天狗様 ①相模川の河童
中津川の鮎姫 ②太郎河童の夢
たぬきどんときつねどん ③相模のかっぱ漬け
薬師さまと清水池の亀 ④河童のお使い
亀と黒犬 ⑤相模の河童さくらの宴へ
田んぼのカエルと猿 ⑥相模の河童まつり
小さい雲と大きい雲 ⑦相模の河童まつり宴たけなわ
田んぼのドジョウ ⑧相模の河童村 三流
五羽のコガモ ⑨河童の名工 甚五郎
うぐいすの鳴き声 ⑩名工甚五郎とかっぱ堂
小鮎川のかっぱと白龍 ⑪太郎河童と小童
カエルッペ ⑫かっぱ村三流のお土産
⑬厚木宿のかっぱ屋
⑭かっぱのなみだ1
⑭かっぱのなみだ2
人間になったかっぱ
⑭かっぱのなみだ3
人間になったかっぱ~町にて~

大山の天狗様

江戸時代の相模の国 三田村(現在の厚木市三田)に働き者の大助という農民がいました。
三田村は大山のふもとで、相模川 中津川 小鮎川の三流の合流地点から近い場所にありました。
大助はまだ12歳になったばかり。幼くして、父親を病でなくし、母親と2歳年下の妹と三人で暮らしていました。とっても貧しい生活でしたが、家族みんなが助け合い生き生きと毎日をおくっていました。
その年は春から雨が降らず、五月の田植えの季節になっても、一滴の雨も降らず、田や畑はカラカラに乾き、草一本 生えない日照りが続いていました。このままではこの一帯の村々は食べるものが無くなり、飢え死にするしかありません。三流の川の水も細々としか流れず、村々の水争いは各地で続きました。

大助 「お母、このまま雨が降らないと飢え死にするしかないなぁ。」
   「雨よ! 雨よ!降ってくれ。 大山様お願でごぜえます!」

母親のたか 「もう二、三日で食べるものも無くなってしまう。大山様! どうか どうか 雨を降らして下さい。」
妹のゆ 「お腹すいた、お米が食べたいなぁ。」
「見るものみんな おむすびに見えてしまう。」

大助 「情けないこと言うなぁ・・でもお腹すいたなぁ。何とかしないと~何とか! ・・・」
 
その日も一日中 お日様は照りつけ、一滴の雨もふらず夕暮れを迎えた。
残っていた芋を煮て、芋じるを食べ空腹をいやし寝床に入った。
大助は空腹でなかなか眠りにつけず、うとうとしていると どこかから大きな声がした。
「おきろ! おきろ! 大助! 」と揺りおこされた。
ふっと眼をさますと、大きなうちわを持った鼻の長い、天狗様が立っていた。

大助 「わぁぁ!天狗様ではないか!」

天狗様 「わしは大山の大天狗だ! おぬしがわしを呼んだので、やって来た!」「 わしに何ようか?」

大助 「天狗様!どうかこの村に雨を降らして下さい! この春から一滴の雨もふりません! 天狗様のお力で、どうかこの村をお救い下さい!このままでは飢え死にするしかありません」

天狗様 「雨を降らせとな~」

大助 「田畑もみんな干しあがり、からからに乾ききっています~あと二、三日で食べる物もなくなってしまいます!どうか!どうか! 天狗様のお力で雨を降らして下さい 」

天狗様 「その願い、聞き届けないわけでは、ないが。」

大助 「なんでも、天狗様の言いつけには、従います! 」

天狗様 「しかと相違ないか!」

大助 「相違ございません!」

天狗様 「それでは申しわたす。おぬしの魂を、くれ!」

大助 「わたしの魂って、どこにあるんですか? 」

天狗様 「おまえの命のことだ!」

大助 「えっ、そればかりはお許し下さい。わたしには老いた母、幼い妹がいます。わたしがいなくなったら、生きていけません。」
天狗様は大助、そしてすやすや寝ている老いた母、幼い妹を見つめていた。そして口を開いた。

天狗様「よかろう。それではこうしよう、わしを楽しく喜ばしたら、おぬしの命をとるのは止めよう 」

大助 「本当ですか!」

天狗様 「だがわしを楽しく喜ばさせ、心に響かなかった時はおぬしの魂をもらうぞ!いいな」

大助 「はい、かしこまりました。」

すると音も無く天狗様の姿は消えた。そして、まもなくざ~ざーと激しい音とともに雨が降って来た。

大助 「雨だ!雨だ!わぁ雨だぁ!お母!お母! おきろ!雨だ~雨だ!」

たか「えっ?雨?本当か!ゆ!ゆ!おきなさい! 雨、雨だ!とうとう雨がきたぁ!」

雨音に、村中の村人が外に飛び出して、踊り、祈り、歌い、歓声をあげている。
(天狗様が約束どおり、雨を降らせてくれた)
村人は大喜びだが、大助は一人ふと、物思いにふけった。

大助 「天狗様との約束ごと・・・何をすれば?天狗様を楽しませ、喜ばせることができるか・・・。」

翌朝も雨は一日中 降りそそぎ 田も畑もたっぷり水がたまり、相模川、中津川、小鮎川の三流も元の豊かな流れに変わっている。そして次の日も雨、あちこっちに小さな溜め池ができ、小さな流れとなった。それから数日後雨があがった。
大助は母親に「天狗様との約束」を話した。

たか「そんな約束を、天狗様としたのかえ。」

ゆ 「どうしてそんな約束をしたのかえ。」

たか「そうだ! 村の長老に相談しよう。何かいい知恵をもっているかも。」

大助、たか、ゆ、は村の長老を訪ねた。長老は静かに大助の話を聞いた。そして目をつぶり考えた。そして口を開いた。

長老「村人で笛を吹ける者、太鼓をたたける者、面を作れる者、踊りを出来る者、衣装を縫える者を、いそいで集めなさい。」

長老の指示で村人が集まり、いそいで各々の役割を、分担して、作業や練習にはいった。

長老 「面は天狗様の面、翁の面、童の面をほりなさい。衣装は白の装束に、腰には豊作を祈って稲わらをまきなさい。笛、太鼓、踊り、心を一つにして大山様にむかい、舞いなさい。」

晴れわたった、さんさんとお日様がてる日、いよいよ天狗様に約束ごとを、はたす日がやってきた。大助は気が気ではなかった。もし天狗様が楽しく喜ばなかったら、自分の命はない。大助が天狗様の面をつけ、舞うこととなった。

長老 「では始めなさい。心を合わせ、楽しく、喜びを表わしなさい。生きていることが喜びだということを、大山様にとどけなさい。」

笛、太鼓、手拍子、舞が一つとなって相模の地 三田にひびく。大助は舞ながら、天狗様が頭上に止まり、じっと見つめているのがわかった。そして大助、一生一代の舞が終わった。天狗様の声が聞こえた。

天狗様 「大助、良かった!短い時間によくここまでできた。村人もよくやった。ほめてとらす。これからのち、この相模の国を、豊かな地にすると約束しよう!そして、今の舞を「相模の里神楽」と名づけ、子々孫々にいたるまで舞い、大山に献じなさい!」

いまでもこの相模にのこる「相模の里神楽」である。 
そして、それいらい大山は「雨降り山」とよばれている。
 
(終わり)



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中津川の鮎姫

相模の国に中津川とよばれるきれいな水の流れる川があります。水がとても澄み、鮎が沢山住んでいる、美しい川です。
ある日、釣り人が釣り糸を流していると突然引きがあり、針がお腹にかかり、形がよい美しい鮎があがりました。

釣り人「何と美しい鮎だこと。いままで見たこともない形だこと。今日はあまり釣れないので、もう上がろうか。この形の良い 美しい鮎は逃がしてやろうかぁ」

釣り人は、釣り上げた美しい鮎をそっと川にいれ、逃がしてあげました。鮎は静かに沈むと川の本流に帰っていきました。

釣り人「 さぁ~帰ろう。」

といつもの道を歩いて帰りました。
すると中津川をわたる橋に、一人の美しい若い女の人が、立っていました。釣り人はびっくりして立ち止まりました。

釣り人 「あんりゃ?あんたは誰じゃ、なんでそこに立っているんじゃ?何をしているんじゃ?」

若い女 「わたしはさきほど逃がしていただいた、鮎です。」

釣り人 「ぶったまげた、本当にそうか、あの鮎か。それでこのわしになんぞ用か?」

若い女 「お頼みしたい事があります。」

釣り人 「このわしに何をしろというのか。」

若い女 「このさきの下ったところに、もぐり橋があります。そこに悪さをする河童がすんでいます。その河童を退治してほしいのです」

釣り人 「河童を退治してくれとなぁ!」
 
若い女 「退治といっても、もぐり橋から他の場所に、移してほしいのです。」

釣り人 「その河童は何をしたんじゃ?」

若い女 「わたしたち鮎族は、春先に、海からそ上して、生まれ故郷に帰ってきます。いつの頃からか、もぐり橋にやっとの思いで到着しますと、河童が現れ通行料を取るようになりました。」

釣り人 「河童が通行料となぁ、ワハハハ。何を払えと言っているのか。」

若い女 「海の真珠です!」

釣り人 「海の真珠だと!」

若い女 「最初の頃は、河童の要求もそれほどでもなく、いたしかたなく払っていましたが、年を追うごとに増え、100匹に対して1個となり、いまでは三匹で1個となってしまいました。」

釣り人 「いたずら河童は真珠をそんなに沢山とって、なにに使うのじゃろう?」

若い女 「何にも使いません、ただ自分が川で一番エライと言うことを見せたいだけです。」

釣り人 「なんで、いたずら河童は、三匹で真珠1個なんじゃろう。」

若い女 「なんでも、人間との約束ごとだとのたまっています。訳がわからないのです。」
  
釣り人 「いたずら河童の、好きなものはなんじゃろう。」

若い女 「それはダイコンです!」

釣り人 「ダイコンじゃと?そうかぁ。えらいものが好きじゃのう。さぁて・・・どうしたら・・・」

若い女 「もぐり橋から、ずうっと上にあがって行きますと、大きな大ぜきがあります。そこから、もっと上に湖があります。その両岸は土もこえ、野菜作り、とりわけ、ダイコン作りはちょうど良い土地です。」

釣り人 「そこへ連れていけとな?」

釣り人はじっとして考えた・・・どうしようか、この女の話をきいてやり、いたずら河童を連れていくか、それとも止めようか。
すると、若い女がさらに言う。

若い女「もしいたずら河童を連れていってくれましたら、御礼に河童がこれまで、わたしども鮎から集めた真珠を、ある場所から持ってきましょう。」

釣り人「真珠をくれるのか!」

若い女 「はい、全て差し上げます。」

釣り人 「河童の真珠をか?」

若い女 「はい。わたし共が通行料として払った真珠です。」

釣り人 「河童が怒らないか。」

若い女 「いいえ、怒りません。河童はおもしろがってやっているだけで、川のあるところの、水底の大きな穴に放りなげています。いたずら河童は、最近は人間からダイコンが手にはいらないので、イライラしています。必ずこの話にはのってきます!ぜひやって下さい。」

釣り人 「そんなものかえ。」

若い女 「それに河童の弱点をお教えいたします。」

釣り人 「いたずら河童に弱点が、あるかえ。」

若い女 「河童は大堰を登れません。」

釣り人 「上り下りができないのか?」

若い女 「平らのところはトコトコ歩けますが少し高くなると、上れません。この先の大ぜきを越えれば、もう、こちらに帰れません。」

釣り人 「そうかのう・・・」

若い女 「いたずら河童は、このところ毎日夕暮れ時に、もぐり橋の上で村人を待ち伏せして、ダイコンを取ろうとしています。でも、村人も警戒して、もぐり橋をさけて、違う橋を使い、行き来しています。」

釣り人 「河童の真珠は、沢山あるのかえ?」

若い女 「ここ何十年も、わたしども鮎から集めた真珠は、大きな川底の洞穴にぎっしり詰まっています。その洞窟がいくつもあります。鮎の真珠は大変良いもので、宝物になるでしょう。」

釣り人 「ほ~う、そうか。それじゃ、やってみんべえか。」

若い女 「ありがとうございます!きっと、きっと、お願いします。」

釣り人は村に帰った。そして一晩まんじりとしないで、あれこれと考えた。そして翌日畑に行き、ダイコンを何十本と抜き、肩のかごに入れ大ぜきについた。

釣り人 「ようし、せきの上に下から、見えるように並べよう。」

釣り人は、せきの下から見えるようにダイコンを並べおえると、夕暮れを待った。
夕暮れどき、いよいよもぐり橋のいたずら河童に、会いに行った。
もぐり橋に着いた。いつものように、橋の途中にいたずら河童が陣取って、村人が通るのを待ち構えていた。

釣り人 「これ、これ、河童、名のない河童、そこで何をしている?」

河童 「この俺様のことか!」

釣り人 「そうだ!お前のことだ。」

河童 「ちゃんとした~名があるぞ!」

釣り人 「へえ、何と言う名だ。」

河童 「俺様の名は、太郎河童ともうす!」

釣り人 「たいそう、いい名だ!御見それしました。」

太郎河童 「えへん、そうか、よろしい。ところで、おまえは何を持っている?」

釣り人 「ダイコンを一本持っている」

太郎河童 「やや、なんと、ダイコンとな。よろしい、こちらに投げてよこせ!」

釣り人 「ほら、投げるぞ!えいっ」

太郎河童 「よしっ、ガリガリ、ガリガリ。うまい、うまい、久しぶりの、ダイコン!ガリガリ、ガリガリ。うまかった!もっとないか」

釣り人 「この先の大ぜきに、沢山あるぞ!」

太郎河童 「本当か!ようしようし、いますぐいくぞ!」

太郎河童、釣り人が大ぜきに急ぐ。

太郎河童 「ありゃりゃ?なんだなんだ、こりゃ」

釣り人 「大ぜきの上に、あるじゃないか!」

太郎河童「大ぜきは、おれは上れない!」

釣り人 「それじゃ、おれがおぶっていくのは、どうじゃ?上には沢山のダイコンや、青物があるぞ!」

太郎河童 「この俺様が出来ない事はないが、俺様も少々、年をとった。この大ぜきを登るのはしんどくなった・・・」

釣り人 「この上にはおぬしがこれまで経験したこともない楽しい世界があるぞ!おぬしの大好きなダイコンや青ものが沢山とれるぞ!」

太郎河童 「・・・・・・・・・」

釣り人 「どうじゃ、勇気をだして踏み出さんか。」

太郎河童 「おぬしはそんなに、なぜすすめるのか。おぬしはそれで、なんか得をするのか?」

釣り人 「ただの、おせっかいだよ。おぬしがわしを疑うのならば、この場を去る。いいか?」

太郎河童 「まあまてまて、そう怒るな。おちつけ。おれも、この狭い場所に厭いていた。大ぜきの上にいってみたいと夢みたことも、度々あった。ここは、流れも速いし水の量も少ない。それに好物のダイコン、村人は運んでこなくなった。」

釣り人 「どうだ、ここらがしおどきだ、決めろ!おれがおぬし上に運び、そしておぬしの大好きなダイコン、青物をつくってやる。」

太郎河童 「いつも、ダイコンや青物がたべられるのじゃな・・・」

釣り人 「うん、そうじゃ。」

太郎河童 「よし! 決めた!上にあがろう。おぬし必ず、約束をまもれよ。」

釣り人 「さあ、俺の肩にのれ、いくぞ!」

釣り人の肩に乗り、太郎河童は、住みなれた下の流れから、上のまだ見ぬ世界へと、ところを変えた。

太郎河童 「わあぁ、こうなっていたのか!随分と深そうだなぁ。流れが穏やかで、住みやすそうじゃ。それに色んな魚がいそうじゃ。」

釣り人 「お前の好きなダイコン、青物はおれが作り、いつでも食べられるようにするからなぁ。」

太郎河童 「頼むぞ!約束を守れよ!さて、もっと上の湖とやらをのぞいてこよう。じゃ、またなぁ~」

釣り人 「気をつけて、いけよう。」

釣り人は鮎姫と出会った、いつもの釣り場へ急いだ。そして鮎姫をよんだ。すると、音も無く鮎姫が現れた。

釣り人  約束ははたした!太郎河童を大ぜきの上に移した。」

鮎姫 「存じています、本当によくやってくれました。御礼もうしあげます。これで安心して、海から上がってこれます。さあ、これをお受け取り下さい。」

鮎姫は真珠の入った大きな袋を侍女にもたせ、次々と釣り人の前においた。沢山の大きな袋が並べられた。
 
釣り人 「わしは、太郎河童との約束をはたすため、大ぜきの上の両岸の土地を買い、ダイコンや青物を植える。土地とダイコン、青物のたねを買える、量の真珠があればいい。この小さい袋が一つあれば、足りる。あとは、元に戻しておいてやってくれ。」

釣り人は小さい袋を一つ、受け取ると、帰ろうとした。その時、鮎姫が声をかけた。

鮎姫 「名がないと、言いましたね、お名をつけませんか。」

釣り人は暫く考えた。

釣り人 「そうだな、太郎河童もかわいそうなやつ。これからも、つき合ってやらねば・・・そうだ!鮎姫の鮎、太郎河童の太郎から取って、鮎太郎!どうじゃ?」

鮎姫 「いいお名でございます。鮎太郎様!」

釣り人 「そうかぁ、鮎太郎!わはは」

鮎姫 「それでは鮎太郎様、御礼と、お祝いに一さし、舞ましょう」

鮎姫の舞は、それはそれは美しい、心にしみわたる舞であったそうな。

いまでも相模川の三流合流地点のどこか、川底の洞穴には、太郎河童が隠した、真珠が眠っていると伝えられている。
そして、鮎姫の舞は地元の人の心の中に伝えられている。


(終わり)


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きつねどんとたぬきどん

昔々、相模の国の相模川の河原に、きつねとたぬきがおとなりどうしに、住んでいました。
ある日のこと、浅くなっている川の流れに、「ぱしゃ、ぱしゃぱしゃ」と、何回も音がしました。きつねどんとたぬきどんが「はて?なんだろう」と音のする浅瀬に見にゆきました。するとそこに、今まで見た事もない大きな魚が石の河原に横たわっていました。もう動いていません。
きつねどんもたぬきどんも、もう何日も食物を口にしていません。目がくらみ、お腹が「ぐぅ~ぐぅ~ぐぅ~」とないています。 

たぬきどん「おれが先だ!魚のしっぽをおれが最初におさえた!」

きつねどん「いや、おれが先だ!魚の頭をおれが最初におさえた!」

きつねどんとたぬきどん、魚の頭としっぽを引っ張りあって一歩も譲りません。
そこに「とんび」がやってきました。すぐ近くの松の木の枝に止まって、きつねどん、たぬきどんのやりとりを見ています。
たぬきどん、きつねどん、だんだん疲れてきました。
そこで、とんびが言いました。

とんび「きつねどん、たぬきどん!どうじゃ、ここらで水いりにしてはどうかい。ここは、おいらにまかしてくれないか。どうじゃ、おぬしらは化けるのがうまいと聞いている。化け合戦、どちらが本当に上手か、それに勝った者がその魚をもらう、どうじゃ?」

きつねどん、たぬきどん、もうへとへとに疲れていたので同時に魚をはなしました。

きつねどん「ようしやろう、おれが勝つ!」

たぬきどん「おれが勝つに決まっている!やろうじゃないか!」

化け合戦が始まることになりました。とんびが問題を出して、行司をすることに決まりました。

とんび「それでは聞くが、おまえ達が一番怖いものは何だ?」

きつねどん「決まっているじゃないか!人、とりわけここへよく来る釣り人が一番怖い」

たぬきどん「おれも、釣り人が一番怖い」

とんび「決まった!それじゃ釣り人になあれ~」

きつねどん、たぬきどんはぱっと消えて、変身しました。
きつねどん、たぬきどん、どちらも男の釣り人になりました。それはそれは見事に変身し、とんびも感心しています。
おや?きつねどんが少し変です。

たぬきどん「きつねどんのしっぽが出でいる!あははは、おれの勝ちだ!やったー!」

とんび「どれどれ、本当だ。この勝負、たぬきどんの勝ち!」

きつねどん「まてまて、たぬきどんも、お腹がずいぶん出ているじゃないか!」

とんび「どれどれ、本当だ。ずいぶん出ているな。さて、困った~どうしようか?」

とんびは思案しているよう、首を回して一鳴きした。

とんび「それじゃもう一回だけ、もう一回だけの最後の勝負をしょう。いいな、あと一回でどちらかにきめるぞ!いいな!」

きつねどん「のぞむ、ところだ!」

たぬきどん「まあいいか、しかたないな」

とんび「それじゃ、元の姿にもどってくれ」

きつねどん「元の姿にもどるには、少し時間がかかるのだ」

たぬきどん「化けるときはすぐできるが、元にもどるには少し時間がかかる。しばし待ってくれ」

とんび「ほう~何、元にもどるに時間がかかるとなぁ~。ん、ん、ほほほ、ほほほ・・・」

さて、二匹がもとにもどり、もう一回だけとんびが課題を考えた。

とんび「では、よろしいか、次は生き物で、もっとも小さなものに、変身してくれ」

きつねどん「ほい!きた、おやすい御用だ!変身!」

たぬきどん「じゃぁ、いくぞう!変身!」

きつねどんは、ありに変身。たぬきどんは、てんとう虫に変身。それはそれは、見事なあり、てんとう虫でした。

とんび「それじゃ、近くによって、見せてもらおう!ほほほ~これはこれは、見事なあり、てんとう虫!あっぱれ、お見事!」
とんびはちいさな虫になった二匹のそばにころがっている鮭のほうへあゆみよりました。

とんび「それじゃ、この魚を見せてもらおう。何と、りっぱなさけじゃ!この川では初めて見た。」
「記念にこのおれがいただこう!さらばじゃ!さらばじゃ!ほほほ~」

きつねどんとたぬきどん、あっと思いましたが、すぐにはもとの姿にもどれません。ありとてんとう虫のまま、飛んでゆくとんびの姿を見送りました。

この地方では、「とんびに油あげ」といわず、「とんびに魚」といわれています。
分け合えば十分にたりるが、奪いあえば何も残りません。


(終わり)


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薬師さまと清水池の亀

神奈川厚木市の妻田(妻田)に妻田薬師というお寺様があり、その境内には、樹齢700年と言われる、巨木、古木のクスノキがあります。幹には「武田信玄」が小田原城を攻め、帰路、社堂に放った火が、燃え移った痕が残っています。
そのすぐ近くに、小さな湧き水の池があります。
「薬師様の清水池」と呼ばれています。昔偉い、お坊様が薬師堂で七日七夜の修行をされ、満願の朝方、清水池に蓮の白根がいっぱい伸び、きれいな花が咲いたと伝えられている池です。
そこには昔から大きな亀が住んでいます。今からずうっと昔、江戸時代のお話です。
ある朝、薬師様からほど近い妻田村の田んぼの小路を一匹の小さな亀がゆっくり、のそり、歩いていました。そこえ野良犬がやって来て、亀を吠え、足で甲羅をひっくり返し、噛みついていました。
そこへ野良仕事からの帰りの、一人の男の子がきました。
名を次助と言います。田んぼや畑の仕事を、病気の父に代わり、母親と幼い兄弟と力を合わせ、作物を作っています。
次助はくわを持ち上げ、野良犬に立ち向かいました。
「あっちへいけ!亀からはなれろ!たたくぞ!いけいけ!」
六助は野良犬の足もとに、くわで思い切り「ざっく!」と土を削りました。
野良犬は驚いて、「きゃん、きゃんきゃん」と叫び飛びのき逃げ去っていきました。
「亀よ、よかったな~、もう大丈夫。怖かっただろう、傷はないか?さてどうしようか、おまえはどこからきたのか?」
次助は考えました。
「そうだ、この近くの池というと、薬師様の清水池じゃろ。清水池まで連れてってやるから、安心しなよ」
六助は背中の籠に亀をそっといれました。そして薬師様の清水池を目指して歩きはじめました。
途中で、迎えにきた、幼い妹弟に出会いました。
「にーに、籠に何が入ってる?」
「これか。亀だよ。」
「亀?どうするだぁ」
「薬師様の亀だと、思うだぁ。」
「清水池に逃がしてあげようと思うだぁ。」
「そうか~じゃぁいこう」
皆で、掛け声をかけ、手をつないで清水池向かいました。
池に着きました。さっそく籠をおろし、やさしく亀をだき池に放してあげました。亀はうれしそうに水から頭を出し、泳ぎ回りました。
兄弟は亀をやさしくみつめていました。
「薬師如来様、如来様、どうか、おとうの目を治して下さい」
「どうか、どうか、おねげい、いたしますだ~」
「目を見えるように、おねげい、いたします。」
幼い兄弟も手を合わせ「如来様」に祈りました。
また手をつないで、妻田村の家にいそぎました。
家では、母のたかが、正月用のお飾りを一生懸命作っていました。目の見えない父も器用にわらを編んでいました。
「お母、おにーが今日、畔道をよちよちあるいていた亀を、野良犬から助け、薬師如来様の池に戻してあげたんだょ」
母 「そうか。それはいいことしたねぇ~」
父 「そうか。如来様のご利益があるぞ、あははは」
母 「それじゃ、晩飯にするか。お隣から頂いた美味しい煮付けがあるぞ。」
次助 「かか、手伝うから早くしてくれ、腹がすいた」
貧しいながら、一家そろっての晩飯である。笑いが絶えない家族の一日が終わり。床についた。
次助は不思議な夢を見た。
夢の中に薬師如来様がお出ましになり。こう告げた。
「次助や、きのうは、わたしの使いの亀を助けてくれて、ありがとう。礼をいいます」
「御礼にあなたの願いを、聞きとどけよう。」
「おとうの、目を治してあげます。」
「朝日が上がり、その光が清水池に届く時、池の水を汲みなさい。その水で、おとうの目を洗いなさい」
「さすれば、ただち目の病は去り、元の自然の目にもどっているでしょう。」
次助は、はっとして飛び起きた。あたりはまだ暗かった。
「これは、如来様のお告げだ!」、すぐに衣服を整え、
木の桶を持ち、まだ暗い夜明け前の小道を急いで、薬師如来様の清水池に向かった。
清水池に着くと、「薬師如来様」祈りをささげました。
「どうか、如来様、おとうの目をお治し下さい!」
「どうか、どうか、おねげいいたします!」
「お告げのとうり、お水を汲んでまいりますだ」
次助は朝日の上がるのいまかいまか、と待った。しばらくして、東の空がだんだん明るくなり、最初の朝日が清水池に届いた。すると、池の上がぱぁっと明るくなり、「薬師如来様」がおでましになった。
次助の持っていた桶が音も無く移動し、清水池のお水を汲んだ。そしてまた、音も無く次助の手もとにもどった。
「次助や、亀を助けてくれた善行、そして日頃のおまえの親孝行、よき事、よき事、つづけよ、」
と告げると、薬師様のおすがたは消えた。
次助は薬師様に深ぶかと頭をさげ、薬師様の聖水を入れた桶を持って家に急いだ。
「おとう、おとう、薬師様のお水をいただいてきた!」
「おかぁ、おかぁ、きてくれ!」
「りゅう、ゆあ、みんなきてみろ!」
家族が皆、土間に集まった。
「次助、どうした?何があったじゃ~」
「おにー、なんじゃ?」
次助が昨夜の夢の話をし、清水池の「薬師如来様」がおん自ら、お水を汲んで、渡していただいた事を告げた。
家族全員が妻田薬師様に向かって、手を合わせ祈った。
「おとう、目を洗え」
皆が見守る中、おとうは、桶に両手を入れ、目をゆっくりと洗い、水の中で両眼を開いてみた。
「おお、おお、見える!俺の指が見える。見えるぞ!」
「ありがたや!ありがたや!見えるぞ!うおおおぅ」
「本当か!おとう、おとう!」
「おとう、おとう!このゆあが見えるか、おとう!」
「見えるぞ、見えるとも!おかぁも、次助も、りゅうも、みんなみんな、見える」
「薬師様、ありがとうごぜいます!うう、うっうっ」
「おお、おお、うれしや!うれしや!よかった!よかった!薬師様、ありがとうごぜいます!」
一家は、妻田の薬師様にいつまでも、いつまでも、長い祈りを捧げました。
それからは、一家はずっと幸せに暮らしました。


(終わり)




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亀と黒犬

昔むかし 相模の国に厚木村という村落がありました。
村の近くを大河、相模川が流れていました。
そこに大きな中州があり、亀、たぬき、きつねが住んでいました。
ある日のことです。
大きな魚が中州にうちあげられていました。最初に亀どんが見つけました。
「わぁ、何と大きな魚だろう」
「ごちそうだ!食べでがありそうだ」
そこへ、突然大きな黒犬があらわれ、魚を奪おうとしました。
「あぁ、大変だ!亀どんが最初に見つけた獲物を黒犬が奪おうとしている」
「亀どんを助けなくちゃ!」
たぬきどん、きつねどんが亀どんに力を貸して大きな魚のしっぽをかみ、思い切り引っ張りました。黒犬は頭の部分をかみ思い切り引っ張っています。どっちも一歩も引きません。 
時間がたっても、「ウ~ウ~ウ~ウ」どちらもうなり声をあげ、勝負がつきません。
大きなワシが上空から、その様子をながめていました。すると、スウーと降りてきて、中州の一本の木に
とまりました。
「お~いお前たち!いつまでそうしているのか?」 「やがて、お日様もおちやうぞ~」
「どうだ、ここは、ワシにまかせぬか」
黒犬も亀どん、きつねどん、たぬきどんもすでに疲れ果てていて、もう力も出なくなっていました。
そうほうともほぼ、同時に魚をはなし、その場にへたりこんでしまいました。
「さて、何か競争をして勝ったほうが魚をいただく」
「どうだ、これがよかろう、どうだ!」
黒犬 「かけくらべをしよう。中州のはじまでいってここまで帰ってくる、小さな亀さん、早く帰ったほうが勝ち。どうだ!」
少し考えてから、亀どんが答えた。
「よかろう、ただし、ニ回勝負にしょう」
黒犬「二回勝負だと?なんだ、それは?」
亀「二回目はこの相模川をわたって帰ってくる。どうだい、大きな黒犬どん」
 「いいだろう、おれ様は「犬かき」といぅとくいな泳ぎを持っている。みんなに見せてやる、ワハハハ」
おれ様がもらった。ワハハハ、ユカイ、ユカイ!」
ワシ「ようしきまった。それでは一回目はじめよう。たぬきどん、勝負始めの線上に立って、きつねどん中州のはずれに立って。わしがギヤァ!と一声かけたら勝負始めだ、いいな」
「それでは始めるぞ」
「ギヤァ!」
黒犬どんが勢いよくかける、かめどんはゆっくりゆっくリ、のそり、のそり進む。黒犬どんは早くも中州のはずれに到着。折り返してきて、かめどんを笑う。
「どうだ、おれさま、もう折り返ししてきた。アハハハ。もう一回、いってこよう、ヘヘヘ!」
黒犬どんはきつねどんのいる中州のはずれをめざす。
そしてきつねどんにわざとぶっかって、たおす。
「悪い。悪い。勢いがつきすぎてね、アハハハ。じゃな~」
かめどんはまだ中州のはずれまで半分しかいっていない。「もう遊ぶのを止めて、勝負をつけょう」
たぬきどんのいる勝負線をこえた。
ワシ「勝負あった。黒犬どんの勝ち!」
かめどんはまだきつねどんがいる中州のはずれまでとどいていなかった。
きつね「かめどん、かめどん、勝負あった!そこに止まって、もどりなよお~」
亀「あぁ~ 負けてしまったか。しかたない。」
きつね「私の背中におのり。まだ、ニ回目があるから、がんばって。」
亀「ああ~つかれた。それじゃお言葉に甘えて,背に乗せてもらおうか」
かめどんは始めの勝負線にもどった。

ワシ「それではニ回目を始める。用意はよいか。それでは」
「ギヤァ!」
ニ回目は大河、相模川をわたってもどってくる勝負である。かめどん、黒犬どん「ドボン!ドボン!」と飛びこんだ。得意の犬かきで、スイスイとすすむ。かめどんは水中にもぐり、強い流れをさけながらすすむ。相模川の本流に黒犬どんがかかった。
たぬきどん「あれれ、黒犬どんがながされていくよ!」
きつねどん「大変だ、黒犬どんがおぼれそうになっている!」
黒犬どん「助けてくれ!」
ワシがあわてて飛びたった。
「今助けにいくから、あばれるな!」
かめどんもおぼれそうな、黒犬どんにきがつき、もぐりながら黒犬どんに近づく。
黒犬どんの下へ入って、身体を浮かせる。
ワシどんが黒犬どんの首をつかみ、岸へひっぱる。
たぬきどん「がんばれ!黒犬どん」
きつねどん「もう少しだ、がんばれ!」
やっと浅瀬に黒犬どんを引きよせた。
黒犬どんは岸にあがった。
「ゼイゼイ・・・アァ、助かった。みんなありがとう」
かめどん「よかった、よかった。水の中の勝負なんかさせて、ごめんね」
黒犬どん「おれが悪かった、ごめんね」
ワシ 「それじゃ、この魚をみんなで分けよう」
かめどん「それがいい、それがいい」
「奪いあえばたりない、分けあえば十分足りる」
相模の国 相模川でのおはなしでした。


(終わり)




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田んぼのカエルと猿
あるのどかな昼下がりの田んぼでのことでした。
カエルがのんびり昼寝をしているとき、一ぴきの猿がちかづいてきました。
「お~い カエル、おまえはそんな狭い田んぼの中でたいくつではないか」
「毎日、同じ場所でよく飽きないなぁ~」
「広い世界に行きたいと思わぬのか」
カエルは薄目をあけて、猿を見て「ぐぁ~く、く」とないてから猿に答えた。
「なに、田んぼの中も、悪くないよ。のんびり日なたぼっこができるし、エサも沢山あるし」
「へー、そうかな?ここから先の山すそにはキレイな花ばながあるし、とっても大きな湖があるよ。キレイなちょうちょが沢山いるし、いろんな虫もいるよ。見たいとおもわないかい?」
「そうね、見たいと思うが、そこにいくまでが難儀(なんぎ)だ。あまり苦労したくないし、じっと、しているのが好きなんだ」
「へ~カエルて変わっているんだねぇ~」
「これがふつうさ」
「そうかい・・・。おれは、朝、山から降りてきて、さっきまで、川で遊び、今は田んぼで、湧き水を飲み、一日中、自由さ。どこへでも、いけるし」
「そう、いいねぇ~」
「それだけかい?」
猿は不思議そうにカエルを見た。
「ぼくも自由さ」
「おまえが、かい?」
カエルが遥か遠くを見つめた。
「ぼくは、あすこの、大きな雲に乗れるんだ」
「え、え~本当か?」
猿はまじまじとカエルを見つめた。
「そういうなら、雲に乗って見せてくれ」
「あぁ~いいよ」
「雲がこちらに来るまで、少し待って」
カエルは大きな雲がこちらに来るのをじっと待った。
猿も田んぼの淵に座ってカエルを見ていた。
やがて雲が田んぼの上にやって来た。
田んぼの静かな水面に大きな雲が写った。
カエルがぴょんとはね、田んぼの雲の中に入った。
見事にカエルが雲に乗った。
「どうじゃ、雲に乗っただろう」
猿はあきれて見ていたが。
「わはは、これは面白い。おぬしは知恵者じゃ。わっはは」
「どおれ、わしも、お山へ帰ろうか。さらばじゃ」
五月のそよ風が田んぼの中を吹きぬけていった。





(終わり)



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小さい雲と大きい雲
相模の国に大山という、大きな、高い山がそびえておりました。
その高い山の上を、のんびりと小さい雲と大きい雲が浮かんで、ゆっくりと流れていました。
大きい雲が小さい雲に語りかけました。
「お~い、小さい雲よ、!小さい雲よ、!」
「え?ぼくのことかい?」
「そうだ、お前のことだよ」
「大きな雲さん、何の用ですか?」
「お前は何で、そんなに小さいの?」
「小さすぎて、すぐに消えてしまわないか」
「生まれてきて、つまらなくないか」
小さい雲の少し上を大きな雲が浮かんでいまいした。
大きい雲に向かって、小さい雲が答えました。
「そんなことないよ、生まれてきて、よかったと思っている」
「へ~い 強がりじゃないか」
「ううん、違うよ。こうして浮かんでいるだけで、幸せなんだ」
「ほぉう、そんなものかえ」
「それに、ぼくは、小さいからとても早いんだ」
大きい雲は小さい雲をちらっと見て。
「そうか、それじゃ、はるか遠くに見える、光っている相模川まで、どちらが早いか,競争しよう!」
「いいよ~」
すると、穏やかなだった風が、大山の方から西風が吹き始め、だんだん、強くなってきた。
大きな雲も小さい雲も風に流され、飛ぶように相模川に向かった。
大きい雲が心配して、小さい雲に。
「あまり、無理するなよう」
「大丈夫、もっと行くよ」
「おい、おい、小さい雲! だんだん小さくなっているぞ」
小さい雲「もう少しで、川の上だ」
「やった~着いたぞ! 僕の勝ちだ!」
「大きい雲さん、ぼくの勝ちだ、ぼくが先に着いた」
大きい雲
「小さい雲、お前の勝ちだ」
「でも、お前、急いだせいで、消えそうだ」
「消えて、なくなりそうだよ」
小さい雲
「いいんだ、いっしょうけんめい、走ったから、それでいいんだ」
「こんど、生まれてきたら、大きい雲さんのように、大きな、大きな雲になるんだ」
「じゃ、また、会おうね」
大きな雲はただだまって流れていった。


(終わり)



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田んぼのドジョウ

「ワァ~、あぶない!」
「にげろや、にげろ!」
一せいに、田んぼのドジョウや、カエルが土の中に、にげこむ。
あめんぼうも稲のねもとへ、にげこむ。
「パシャ、パシャ~」「グ、グルン、グ」音をたてながら、白い大きなかげがせまってくる。
ドジョウやカエルは土の中で息をころして、じっと、白い大きなかげがとおりすぎるのをまっている。
また、音がする、「パシャ、パシャ~」「グ、グルン、グ、グ、グ」 「パク、パク~」
音がちかづく。長いくちばしが、すぐ近くをつつく。ドジョウのなかまが食べられた。「パク、パク~」すぐ真上できこえた。
しんどうもかんじた。「ドン、ドン、ドン」すぐよこがくずされた、「ああ、もう、ダメかな~」
やっと、音がとおざかる。少しずつ、音がとおざかる。
「ホ~よかった、よかった。行ったようだ」
あめんぼうのみはり役が、田んぼのみんなにつげた。
「みんな、しらさぎは飛びさったよ!」
「みんな、みんな、でておいでよ!」「もう、だいじょうぶだよ~」
土の中のドジョウが、くびをだした。カエルもでできた。
「アァ~こわかった!」「もうダメかと、おもったよ。」
でも、「よかった、よかった!」「ずいぶん、長くかんじた~」 「ふぅ~」
あめんぼも、ドジョウも、カエルも水もに顔をだした。
「ドジョウさん、カエルさん、今日もぶじでよかったね」
「あめんぼうさん、あなたのおかげだよ。」
「そうだよ、あめんぼさんがはやくおしえてくれたから、すぐににげられた」
「ありがとう、ありがとう、あめんぼさん~」
「ううん、そんなことないよ。みんな田んぼの仲間じゃないか、たすけ合うのはあたりまえだよ」
「そうだねぇ。みんな、みんな、田んぼのなかま」
ワッハッハッハ、五月の晴れわたった空ににぎやかなカエルの鳴き声がつづき、初夏の風がふきわたった。

(終わり)



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五羽のコガモ
六月のよく晴れわたった朝、田んぼのふちを流れる用水の中をコガモが、五羽泳いでいる。
一列になったり、ニ列になったり、流れに乗って泳いでいる。
岸の上には、母親鴨が「ヨチ、ヨチ、キョロ、キョロ」行進している。
コガモは岸の上の母親鴨の見上げながら、そのあとを「スイ、スイー、スイ、スイー、ストップ」あとをついてゆく。
コガモの行進だ。用水のすぐとなりは、田園の二階だての幼稚園、子供達の歓声(かんせい)が聞こえる。
しかしだれも気がつかない「スイ、スイー、スイ、スイー、ストップ」コガモの行進はつづく。
母親鴨は「ヨチ、ヨチ、キョロ、キョロ」
道を隔てた、田んぼのふちに父親鴨がのんびり、休んでいる。
幼稚園の子供達の大きな歓声が、また聞こえた。
父親鴨が首を持ち上げた。
初夏の空、あおあおと高く、やさしい風が田んぼわたっていった。

(終わり)



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うぐいすの鳴き声
6月のある日の早朝、静かな住宅外のはずれにある、がけ地の一本の大きなケヤキの木の枝から、
「ホーホケキョ」と突然鳴き声が響く。
少し間隔をあいて、また「ホーホケキョ」と鳴き声がする。
がけ下にいる「のら猫の黒ちゃん」が高いケヤキの枝にいるうぐいすをじっとにらむ。
がけ下の家に飼われている犬の「ラブちゃん」も片目を開け「うるさいなぁ」とうぐいすのほうを見る。
七月に入ると、うぐいすの鳴き声が変わった。
「ホーホケキョ、ケキョケキョケキョ」
「ホーホケキョ、ケキョケキョケキョ」
毎朝、雨の降らない日は早朝、明るくなると鳴きはじめる。
「のら猫の黒ちゃん」もあきらめがおで、もう顔をあげない。
飼い犬の「ラブちゃん」ももう顔をあげない。
よく見ると、うぐいすは大きなケヤキの木の中段にあるホコラに巣をつくり頭を、出したり、引っ込めたりしている。
「ホーホケキョ、ケキョケキョケキョ」
「ホーホケキョ、ケキョケキョケキョ」
初夏の青空の下、元気なよく通る声でさえずる。
「ホーケキョ ケキョ ケキョ~」
 「ホーケキョ ケキョ ケキョ~」
今日もよく晴れ、一日が始まった。



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小鮎川のかっぱと白龍


相模の国の飯山というところに、小鮎川という、とてもきれいな水がながれる川があり、そこにはかっぱの親子がすんでいました。
小鮎川とよばれているように、沢山の鮎がとれる、豊かな清流です。
かっぱの親子は父親の次郎かっぱ、母親のさち、息子の龍、娘のあい、の四かっぱで仲良く、生き生きと暮らしていました。
その年は春から雨が降らず、小鮎川の豊かな水も、日一にち、流れが細り、鮎やうぐい、はやも上がってこず、食べ物が少なくなってきました。
この飯山村の付近の百姓衆も、困っていました。
五月の田植えの季節になっても、一滴の雨も降らず、田畑はカラカラに乾いて、草一本、生えない、日照りが続きました。
次郎かっぱの親子は、川の水がないと、生きていけません。
さち「 このまま、雨が降らないと、食べものがなくなって、生きてゆけない」
次郎「 そうだな、こんなひどい、長い、日照りは初めてだな」
あい「 お腹がすいた、鮎が食べたい」
龍「 あい、もう少しがまんしろ」
あい「でも、にいちゃん、お腹すいたよ」
次郎「ああ~なんとかしないと」
さち「そう言ってもね~どっこいしょ」
「それじゃ、畑に行って、枯れかけた、ダイコンを取ってくる。
あい、お前も行くか」
あい「ううん、いいよ、いかない。腹すくもの」
そこえ、飯山村の庄屋 吾助が村の衆とやって来た。
すぐさま、口を開いた。
「かっぱの次郎どん、頼みがあってやって来た」
「 今年は春から、一滴の雨も降らず、田畑はカラカラに乾いて、草一本生えない」
「 五月だというのに、田植えが出来ない、このままでは飢え死にしてしまう」
「 畑の青物も枯れてしまい、食べるものが、もう少しで無くなる」
「次郎どん、何とか,おぬしの力で、雨を降らしてくれぬか」
村の衆「このままでは、この地方は全滅してしまう。どうかどうか、力をかして下され」
次郎かっぱは腕組みして、村の衆の話をじっと聞いていた。
おもむろに次郎かっぱが口を開いた。
「 この俺には、雨を降らす、力は無い」
「 小鮎川の流れも細り、この俺も困っている」
「食べる物も少なくなり、日一日、悪くなっている」
その話を聞いていた、村の衆はがっかりして、その場にへたりこんだ。
吾助「 次郎かっぱでも、だめか・・・」
しん~と沈黙が流れた。
すると、次郎かっぱが口を開いた。
「一つだけ、望みがある」
「えlぇ~本当か」
「どんな、望みじゃ、早く教えて下され」
「それは、飯山観音さまの裏、白山山頂にある白山池に住む白龍様に頼む方法じや」
「え、え~、白龍さまかよ」
「でも、どうやって、頼むのじゃ」
「それは、この次郎かっぱに、任せてくれ」
「そんなこと、本当にできるのか?」
「そう、俺には出来る」
「さぁ~これから、呼びかけるから、下がってくれ」
次郎かっぱが頭の皿に手をやり、手を何回も回し、白山池に向かって、手を広げ、気合を入れた。
「えぃ~ 白龍さま、白龍さま、おでまし下され」
「白龍さま、白龍さま、この次郎かっぱの願い聞き届けくだされ」
村人は皆、正座をして、飯山観音さまの方角を見つめ、手を合わせた。
すると、だんだん風が強くなり、ごうごうとういう音が大きくなり、風とともに、青空に白い大きな、物が近づいて来た。
白龍であった。
天空に止まり、その鋭い目で、次郎かっぱを見つめた。
「次郎かっぱ、わしを呼んだか」
「何ようで、あるか」
「白龍さま、ご覧のように、地上は長い日照りで、カラカラに乾き、草木も枯れようとしています」
「どうか、白龍さまのお力で、雨を降らして下され」
「小鮎川も、荻野川、相模川も流れが細り、百姓衆も田畑の作物が出来ず。そのうえ、田植えの時期に田に水が引けず、困りはてています」
「わたしの住む、小鮎川も流れが細り、食べ物の魚が上がってこず、困っています」
「どうか、白龍さまのお力で、雨を、雨を降らせて下さい」
白龍は天空にとどまり、じっと、次郎かっぱの話を聞いていた。
「よかろう、次郎かっぱ。おぬしの願い聞き届けてもよいが、しかし・・」
「はぁ~、何なりとお申しつけ、下さい」
「 よし、それでは、申しつけよう」
「わしは、玉(ぎょく)を求めている」
「わしにふさわしい、輝きの玉を」
「え、玉(ぎょく)ですか・・」
「出来るか、次郎かっぱ」
少し、間を空いて。
「はい、必ず輝きの玉を、お作りいたします」
「そうか、それは、上々、楽しみじゃ」
「待っているぞ、次郎かっぱ。さらばじゃ」
「皆の衆、聞いてのとおりじゃ、力を合わせて、「輝きの玉」を作ろう。」
吾助「 でも、どうやって、作るのじゃ」
「 この、おれに従ってくれ」
「それは、よいが・・」
「よいか、皆の衆、あそこに見える、丹沢の山奥に水晶が沢山、眠っている山がある。そこから、大きな、上等な石を探して、ここに運んできてくれ」
「あとは、この俺に任してくれ」
吾助「そうか、それでは、皆の衆、水晶山へ出かけ、よい石を運んでこよう」
「まかしたぞ」
「急いで、仕度をしろ」
「ただちに、出かけるぞ」
飯山村の村人は荷車を引き、水晶山に出かけた。
翌日の夕暮れ時に荷車を引いた、村人が戻ってきた。
おおきな、水晶の原石を積んで、次郎かっぱの前に持ってきた。それはそれは、立派な水晶石であった。
「さあ、その水晶石を河原において下され」
「皆の衆は、土手の上まで、下がって」
次郎かっぱと、さちかっぱは、大きな水晶石をはさんで立ち、両手平を水晶石に向けた。
「水晶石よ浮かび上がれ!浮上せよ!」
すると、大きな、重い水晶石が少しづつ、浮かびあがり、頭上でピタリと止まった。
「 水晶石よ、回れ、回れ。丸く、丸くなれ!」
「早く、早く、回れ、丸く、丸くなれ」
水晶石が回り始めた。だんだん早くなり、白い輝きを発し、ますます、早く回転続けた。
土手の上の村衆は正座して、両手を合わせ、祈った。
一昼夜、次郎かっぱ、さちかっぱは一心不乱(いっしんふらん)に念力を発し続けた。
「出来た! 出来た!」
水晶石の回転が少しづつゆるやかになり、止まった。
吾助「何と!神々しい、輝く玉(ぎょく)であることか」
次郎かっぱ、さちかっぱが、手の平をゆっくり降ろした。
輝く玉(ぎょく)がゆっくり降りて、河原に着地した。
村の衆が降りてきて、輝く玉(ぎょく)に手を合わせた。
「さあ、出来た、出来たぞ。こん身の玉(ぎょく)ぞ」
「それでは、白龍様をお呼びいたすぞ」
次郎かっぱが手の平を飯山観音様に向けた。
「白龍様、白龍様、輝く玉(ぎょく)が出来ました。どうぞおいで下さいませ」
すると、だんだん風が強くなり、ごうごうとういう音が大きくなり、風とともに、青空に白い大きな白龍様が近づいて来た。
天空に止まった。
『次郎かっぱ、出来たか』
「 どれ、見せてみろ」
すると、「輝く玉(ぎょく)」は音も無く、天空に上り、白龍様がじっと、見つめた。
「う、う~う、すばらしい!」
「実に、すばらしい、わしが願っていたとおりの、玉(ぎょく)じや」
「うは、はは、は、よくやった、皆の者」
「次郎かっぱ、村の衆、おぬし達の願いききとどけようぞ」
白龍様は輝く玉(ぎょく)を口にくわえると、天高く飛び、
天龍となった。
すると、まもなく、大きな雨雲が次々とあらわれ、大粒の雨が降り始めた。
雨は三日三晩降り注ぎ、小鮎川。荻野川、中津川、相模川、付近の川、池を満たし、元の豊かな流れとなった。
田畑は元の緑をとり戻し、豊かな田園となった。
それからのちも、相模の国は日照りもなく、緑の平野となった。
次郎かっぱ、さちかっぱ、龍、あいかっぱの、親子のかっぱは、いつまでも村人から慕われ、仲良く暮らしました。
白龍様は相模の国の伝説となり、子々孫々まで、語り継がれ、
いまでも、「白龍の舞い」として、受け継がれている。



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カエルッペ


むかしむかし 相模の国の相模川 中津川 小鮎川の
三流の流れる近くに、三田村がありました。
霊峰 大山の見える、豊かな田んぼが広がっている村です。
毎年 五月になると 田んぼに水を引き、田植えが始まります。
この田んぼや、川のほとりには、たくさんの
カエル どじょう あめんぼうが住んでいました。
ある日のことです。田んぼに大きな 白いつがいのサギが飛んできて、田んぼの生き物を探し、かたっぱしから 食べはじめました。
その長い口ばしを使って、つぎからつぎと
生まれたばかりの、おたまじゃくし、どじょう、カエルを飲みこんでいます。
おたまじゃくしは稲の根元に、かえるやどじょうは水底の土の中にもぐり、じっとして、サギが飛び立つまで、隠れています。
長い長い 時がすぎました。
 やっとサギのつがいが飛び去ったのです。
「 あ~ぁ やっと いった。もうダメかと思ったよ」とカエルが言いました。
「今回はひどかった! だいぶ おたまじゃくしがやられた。くやしい~」と別のカエルが言いました。
どじょうも「 うちもたくさん食べられた。あのサギが憎い!」
ガヤガヤ言いながら、カエル どじょう あめんぼうが集まってきました。
カエルの長老が言いました。
「 皆で知恵を出し合って、何とかしなければ、われわれはみんな食べられて、滅んでしまう」
どじょうも「 何とかしないと、どじょうの一族も滅んでしまう。困った、困った」
あめんぼう「おれたちは、なんも力がないし・・」
田んぼのなかまは考えこんで、沈んでしまいました。
その時です。
一ぴきの若い、雄のカエルが言いました。
「どうだろう、カエルの皆が集まってもらい
大きな声で、一斉に鳴いてサギをおどかすのはどうだろう」
他のカエルが
「それだけじゃサギは逃げない。 かえって居場所を教えて、すぐ食べられてしまう」
他のカエルも
「 そうじゃ、そうじゃ、それじゃ、すぐ食べられてしまう」
またみんな、静かになりました。
すると、カエルの長老がおもむろに口を開きました。
「逃げていてもしかたない。 若者が言うように、立ちむかわなければ」
「じゃがなぁ~」と少しの間考えこんだ。
「そうじゃ、この手があった」
「カエル一族の衆。あのサギに立ちむかうには、われわれカエル族に受け継がれてきた、あの手じゃよ。わは、はは;は」
みなが一斉に長老を見つめた。
「カエルッペじゃよ」
「カエルッぺて・・?」
 「カエルッぺじゃ」
「カエルのオナラ ぺーじゃ」
「へー驚いた!」
「そんな手があったか」
長老がみなに話し話はじめた。
「カエルッぺは一、二匹じゃ、さほどの効果はないが、カエル族が一団となり、群になったときはものすごい威力があり、鳥をも倒すと言われている」
「カエル族が心を合わせ、一斉にカエルッぺを放せば、いかなサギでも退散し、二度この村の田んぼにはこないであろう」
田んぼにいた仲間は喜んだ。
「長老さま、長老さま、どうか指示をして下さい。言われたとうり動きます」
そこで、長老は皆に指示を与えた。
「 まず、若者のカエルよ、付近の田んぼ、川のカエルに声をかけこの田んぼに集まってもらいなさい」
「 どじょうの皆さんは合戦時には、おたまじゃくしと水底に隠れて下さい」
「あめんぼうのみなさんは、サギのくるのを
見張って、来たらすぐに教えて下さい」
「ただちに準備に入りなさい」
明日の合戦にそなえて、皆、準備に入った。
カエル族はカエルッぺーがよく出るように 水草を集め、モリモリ食べた。
どじょうは水底をいつものねぐらより深くし、
おたまじゃくしが、逃げらる、よう広げた。
あめんぼうは水面に細かく警戒網をしいた。
いよいよ、決戦の朝が来た。
その日は朝からよく晴れ、風もなく絶好の合戦日和であった。
いつものつがいのサギが田んぼに音も無く舞い降りた。
直ちに、あめんぼうの警戒網が動き出し、みなに知らせた。
その時、カエル軍団が動きだし、応戦体勢に入った。
長老の大きな声を合図に一斉に水面に、田んぼの畦にたくさんのカエル族が現れた。
「サギに向かって、発射!」
ブオー ブオー ブゥー ブゥーという大音響とともに白いカエルペッがサギに向けられ発射された。
すごい臭いである。
あたり一面白いガスにおおわれて前が見えなくなった。
つがいのサギは驚き、息も吸えないガスのため慌てて飛び立とうとしたが、ふらついて、なんども、なんども、飛び立つては落ち、落ちては飛び。
やつとのことで、田んぼから脱出した。
「やった、やった、サギが退散した」
「カエルッペはすごい」
「みんなでやると、すごいことができるんだ」
「カエルさんありがとう。ほんとうのありがとう、カエルさんのおかげだょ」
「そうじゃないょ。どじょうさん、あめんぼうさん、みんなが協力したから出来たんだ」
「みんなの勝利だよ」
「これで、安心して暮らせる。よかった、よかった」
それからも、みんな仲良くくらしました。





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相模川の河童

昔々、相模川に河童がすんでいました。相模川にかかる橋にもぐり橋と、地元の人からよばれた橋がありました。相模川が増水すると、橋が川の中に沈み、普段は人々が行き来する生活橋でした。ある日のこと、一人の村人が野良仕事を終え、川向かいの畑から、もぐり橋を渡って帰ってきた。橋の途中までくると、誰かが橋の真ん中に座っていた。村人は声をかけた。

村人 「もしもし、そこで何をしているのじゃ。通るのにじゃまじゃ、どいてくれ!」

すると、座っていた者が立ち上がった。背丈は普通の大人なみだが、痩せている。頭に皿のような物を載せ、口はとがって、手は異常に長い。目は細長く、変わった形の身体をしていた。

村人 「お前は、どこの者か?厚木村の者か?見た事もないやつだな。なぜ黙っているのか、早くどいてくれ。」

立ち上がった者は無言で村人を見つめていたが、おもむろに、口を開いた。

河童「おれは、相模の川にすむ 河童。名はないが、つけるとすれば太郎。」

村人 「それじゃ、太郎河童、何の用だ!」

河童 「一人では、寂しいから、話 相手がほしい」

村人 「もう夕暮れが、せまっている、おまえの話し相手をしている時間はない。」

河童 「それじゃ背なかの籠の白いダイコンと、青物を少し置いていけ。このところしばらくダイコンを食べていない、置いていけ!」

村人 「それは出来ない。せっかく大事に育てたダイコンだ、置いてはいけない」

河童 「そうか、それじゃあ鮎と交換しようか。」

村人 「鮎か、鮎と交換ならいい。」

河童 「決まった!鮎一匹と、ダイコン一本でどうじゃ。」

村人 「 それじゃダイコンがかわいそうだ。ダイコン一本と鮎五匹でどうじゃ。」

河童 「それじゃ鮎がかわいそうじゃ。じゃあまけて、鮎ニ匹とダイコン一本でどうじゃ。」

村人 「ダイコンは重い、鮎は軽い。不公平じゃないか」

河童「何か変じゃが仕方ない。鮎三匹とダイコン一本でどうじゃ、これ以上はだめじゃ!」

村人と河童の取り決めは後の世に残り、今でももぐり橋をわたる人は、ダイコンを持って渡っているという。

(終わり)



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太郎河童の夢

相模の国を流れる、大河相模川。そこに住む太郎河童。一ぴきで気楽であるが、近頃、少し退屈で寂しい。何故か空しい、誰でもいいから仲間が欲しい。
今日も相模川の中程の大堰(おおぜき)の上でだいすきなダイコンをかじりながら、晴れわたった空をぼんやりながめ、「フウ~」と孤独な、ため息。
「一ぴきでは、寂しいなぁ~アァ仲間がほしい」
「人間をからかうのも、もうあいた。」
「おれはこれからどうなるのか、話し相手が欲しい」
「昔はよかった。数匹の仲間がいて毎日楽しく暮らしていた。あの頃がなつかしいなぁ」
太郎河童の仲間は、かなり昔、新天地を求めて一ぴき
また一ぴき去っていった。命がけの旅にででいった。河童は真水の川では自由自在(じゆうじざい)であるが、海水では長い時間泳ぐことはできない。また歩くことは住みかの周囲しかできない。
「アァ~仲間が欲しい!誰かこの川にこないかなぁ?しかし来るはずはないよなぁ」
太郎河童はいつまでも、ダイコン畑に横に鳴り、遠く高くなった秋空を眺めていた。その時一羽の大ワシが上空を悠然と飛び、大きな輪を描き、だんだん高く遠く、小さくなっていった。
「おれもワシのように自由にどこへでも飛んでいけたらなぁ」
太郎河童は寝がえりをうち、自然と涙があふれてきた。
「俺って、孤独だなぁ」
「人みたいに、旅ができたらなぁ」
「河童の仲間探しにいくのになぁ」
「一ぴきじゃ、生きてゆくのが、つらい」
まだ涙が止まらず、そのまま眠りにおちていった。秋空の中、霊峰「大山」がどっしりと静かにそびえていた。
太郎河童は夢をみた。
多くの仲間が相模川に集まり、楽しくおどり、また食べゆかいに笑いあっている。
ある河童はかっぱおどりをし、またあるかっぱは橋の上から思い切り飛び込み大きな水響きをあげ、またあるかっぱは水の中の鮎や、うぐい、こいをおっかけまわし、たまに首をだして、かっぱの得意のなきごえをする。取っ組み合いの相撲をとるかっぱ達、中州に生えた木から対岸につるの縄を張り、つるの上を歩くかっぱ。それはそれは楽しいお祭りさわぎ。
いつも輪の中に自分がいた。いつも見る夢であった。
一じんの冷たい風が吹き、太郎河童は眠りから目をさめた。
「また夢か。寂しいなぁ」
「あぁ、退屈で死にそう」
「何かよい方法はないかなぁ」
太郎河童はぼんやりと大山をながめていた。
「そうだ!大山の天狗様にお願いしよう」
「天狗様であれば、願いをかなえてくれるだろう」
「でも、どうすれば、よいのやら?」
太郎河童は座りなおし、霊峰大山にむかい祈った。
「どうかどうか、天狗様のお力で、河童の仲間をよびよせてくださいませ。」
「どうかどうか、お力お貸しくださいませ」
いつまでも、いつまでも、祈りつづけた。
沈みゆく夕日のなか、一筋の黄金のひかりが放たれた。
しかし、夢中で祈りつづける、太郎河童の目には映らなかった。


(終わり)




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相模のかっぱ漬け
相模の国の大河相模川のながれる三田村に近くの河原に「太郎河童」という一ぴきの河童が住んでいました。
たった一ぴきで仲間がいません。
「あぁ~、一ぴきは寂しいなぁ」
「仲間が欲しい、誰かこないかなぁ」
「一ぴきじゃ、寂しくて生きていけない」
「あぁ、仲間がほしいなぁ」
大堰(おおぜき)の上のいつものダイコン畑にながながと横になり、じっと秋の空をぼんやりながめていまいした。
そうして悠悠とそびえる、霊峰大山を見るともなしにぼんやり見ていました。
「そうだ!大山の天狗様のお願いしよう」
「大山の天狗様であれば願いをかなえてくれる」
「きっとかなえくれる」
太郎河童は中州に座り直し、霊峰大山に向かい手を合わせ真剣に祈りつづけました。
しばらくすると、沈みゆく夕日の中一筋の黄金の光が座りつづける中州の太郎河童に向かって、さしこんできました。
太郎河童は目を閉じて熱心に祈りつづけているため、気づきません。
太郎河童のまわりが急に黄金に輝き始め、明るく、まぶしく輝き始めました。
それでも太郎河童は気づきません。すると突然大きな割れんばかりの声がしました。
「太郎河童!これ太郎河童、目をあけよ!」
大きな声に驚いて、太郎河童が、おそるおそる、目を開けました。
「わぁ~まぶしい!まぶしすぎて何も見えない」
「目がパチパチして何も見えない」
「太郎河童。上を見よ!」
「え、上ですか?」
声をするほうを見た。黄金に輝く光が引いていき、そこには大きな赤色の形をした物が見えた。
「太郎河童、おぬしがわしを呼んだ。」
「もしや、大山の天狗様でございますか」
「そうじゃ、わしが大山の天狗じゃ」
「ははぁ~。おそれいります」
「さて、わしに何ようか?」
「話をしてみよ」
太郎河童はこれまでのいきさつを話し、一ぴきがどんなに寂しいか、悲しいか、不安か話した。天狗様は上空にとどまり、じっと、河童の話を聞いていた。
「それで、おぬしは河童仲間をよびたいとなぁ、ん・・・ん」
「そうか、その願い、聞きとどけよう」
「それで、河童仲間は日本のどこにおるのじゃ?」
「はい、私ども河童は河童語と、独自の通信があります」
「よんでいただきたいのは、数十箇所がざいます」
「そんなにいるのか?」
「もう少し、しぼれないか」
「はぁ~そうですか。それだは数箇所にしぼります」
「それでは御言葉にあまえまして、まず遠野のかっぱ、五島列島の(ガータロー)、島根の日野川のかっぱ、筑前若松のかっぱ、をお願いいたします。」
「さようか。よし!あい解った。」
「おぬしの檄文はどうする?」
「ひょうたんに、わしのかっぱ語を入れ届けてくだされ」
「ひょうたんにかっぱ語をいれるとなぁ。わはは、わはは!ゆかい、ゆかい」
天狗様が高らかに笑いました。
「天狗様がおいきになるのですか?」
「わしはいかぬ」
「えっ、どなたがいかれますか?」
「太郎河童、後ろをみよ!」
「え、なんですか?」
中州に生えている木の上に一羽の大きなワシが音も無く止まっていた。
「わしの使いじゃ」
「は、は、は ワシ殿が運んでくれるのですか」
「ぜひ、お願いいたしますじゃ」
天狗様は「じろり」と太郎河童をにらんだ。
「ところで、太郎河童、おぬしはわしに何をしてくれるのか」
「え、え?何といわれましても。どうしようか・・・何もないし・・・」
「そうだ!天狗様、わしが漬けた旬の野菜があります、それを召し上がってくだされ」
「旬の野菜の漬物とな」
「どれ、出してみろ」
「今に時期は白菜の漬物が、一番おいしゅうございます。」
天狗様は白菜づけを、「ぱりぱちり」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、なすづけでございます。」
天狗様は茄子づけを「ぎゅぎゅ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、胡瓜づけでございます。」
天狗様は胡瓜づけを「きゅ、きゅ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、かぶづけでございます。」
天狗様はかぶづけを「かぶ、かぶ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは瓜づけでございます。」
天狗様は瓜を「うり、うり」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
天狗様はらっきょを「らっきょ、らっきょ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、だいこんでございます。」
天狗様はだいこんを「でいこん、でいこん」と食べた。

すこし、間をおいて、天狗様が大きな声で。
「太郎河童、美味であった。美味、美味」
「おぬしの願い聞きとどける!」
「これがのち、人と和し、この相模に住まう人達にこの漬物を広めよ!」
「相模のかっぱ漬けと名づけ、長く、後世に伝えよ、さらばじゃ」
大山の天狗様はけむりと共に消えた。そこには、天狗様のお使いワシと相模の河童太郎が、暮れ行く秋風の中にいた。


(終わり)




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河童のお使い

相模の国に相模川にすむ、太郎河童はいつも一ぴき、孤独で寂しい日々を送っていた。
「あぁ~誰か、仲間がこないかなぁ」
「一ぴきじゃ、寂しくて気がおかしくなりそう」
「話あいてが欲しい、あそび仲間がほしい~」
「一ぴきじゃ、生きていけない」
そこで、太郎河童は「大山の天狗様」にお願いすることを思いついた。
「大山の天狗様、どうか、どうか、河童仲間をよびよせてください」
太郎河童は熱心にいつまでも祈りつづけた。すると霊峰大山から一筋の黄金の光が輝き、太郎河童を包んだ。
太郎はまぶしくて目をあけていられなかった。大きな声が頭上に響いた。
「太郎河童、おぬし、わしを呼んだか!」
「もしや、大山の天狗様でございますか」
「そうじゃ、わしが大山の天狗じゃ」
「ははぁ~。おそれいります」
「さ~て、わしに何ようか?」
「話してみよ」
太郎河童はこれまでのいきさつを話し、一ぴきがどんなに寂しいか、悲しいか、不安か話した。天狗様は上空にとどまり、じっと、河童の話を聞いていた。
「それで、おぬしは河童仲間をよびたいとなぁ、ん・・・ん」
「そうか、その願い,聞きとどけよう」
「それで、河童仲間は日本のどこにおるのじゃ?」
「はい、私ども河童は河童語と、独自の通信があります」
「よんでいただきたいのは、数十箇所ございます」
「そんなにいるのか?」
「もう少し、しぼれないか」
「はぁ~そうですか。それでは数箇所にしぼります」
「それでは御言葉にあまえまして、まず遠野のかっぱ、五島列島の(ガータロー)、島根の日野川のかっぱ、筑前若松のかっぱ、をお願いいたします。」
「さようか。よし!あい解った。」
「おぬしの檄文はどうする?」
「ひょうたんに、わしのかっぱ語を入れ届けてくだされ」
「ひょうたんにかっぱ語をいれるとなぁ。わはは、わはは!ゆかい、ゆかい」
天狗様が高らかに笑いました。
「天狗様がおいきになるのですか?」
「わしはいかぬ」
「えっ、どなたがいかれますか?」
「太郎河童、後ろをみよ!」
「え、なんですか?」
中州に生えている木の上に一羽の大きなワシが音も無く止まっていた。
「わしの使いじゃ」
「は、は、は ワシ殿が運んでくれるのですか」
「ぜひ、お願いいたしますじゃ」

太郎河童のかっぱ語を入れた、ひょうたんが各地の河童に運ばれた。
太郎河童のゲキはこう吹き込まれていた。「我々、河童族は子々孫々に渡るまで生き残り,繁栄しなければならない。人間界と和し共に共栄共存をしなければならない。河童族の団結をはかり、交流をはかり、子々孫々に渡るまで繁栄をしなければならない」
「相模のかっぱ祭りを楽しもうぞ!」
「賛同されるかっぱ族は、春はさくらの咲く頃、相模の国、相模川にご参集くだされたい。相模の国 相模川の河童 太郎」
大山の天狗様のお使いワシは各地の河童族にひょうたんのゲキのかっぱ語とある物をおいていった。
ワシがササの葉をくわえ、吹きあげると、みるみる「和船」に変わり、河童族の足として使える船が何そうもできた。
河童族は大変喜んだ。
「この船があれば、遠い相模の国まで寝ていてもいける」
「ようし!春はさくらの咲く頃、一族で相模の国へいくぞ!」
「相模の太郎河童に会うのが楽しみだ」
「大山の天狗様のお使いワシ殿、たしかにうけたまわった」
「この返事をひょうたんに吹き込みますので、お持ち帰りいただきたい」
ワシ「承知した」
大山の天狗様のお使いワシは各地のかっぱ族の返事をもって、太郎河童にとどけた。
「ありがたい!お使いワシ殿、ありがたい、ありがたい」
ところで、太郎河童
「ワシにも、天狗様が召し上がった、相模のかっぱ漬けをだしてくれ」
「はい、おやすい御用、しばらくお待ちあれ」
最初は旬の野菜、白菜漬けを出した。
「今に時期は白菜の漬物が、一番おいしゅうございます。」
ワシ殿は白菜づけを、「ぱりぱり」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、なすづけでございます。」
ワシ殿は茄子づけを「とんとん」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、胡瓜づけでございます。」
ワシ殿は胡瓜づけを「きゅ、きゅ」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、かぶづけでございます。」
ワシ殿はかぶづけを「ぶか、ぶか」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは瓜づけでございます。」
ワシ殿は瓜を「りう、りう」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
ワシ殿はらっきょを「らく、らく」と食べた。
「う~う、もっと他のものはないか?」
「それでは、だいこんでございます。」
ワシ殿はだいこんを「こんだい、こんだい」と食べた。
すこし、間をおいて、ワシ殿が大きな声で。
「太郎河童、美味であった。美味、美味」
「ごちそうになった。さくらの花の咲く頃,おおぜいのかっぱが訪れるであろう。」
「太郎河童、おぬしの願いがかなった、よかったな。楽しめ」
「太郎河童、おぬしにも、どこでもいける和船(かっぱ船)をしんぜょう」
ワシはささの葉をでだすと、「ふ~ふ~」と息をを吹きかけた。
すると大きな和船が、ぱぁっとあらわれた。
「このかっぱ船はおぬしのにがてな、大ぜきもらくらくのりきる海にもいかれるぞ」
「わぁ~本当か、すごい!」
ワシ殿は「ギャア~」と一声なくと羽を広げた。
「いざ、さらばじゃ~」
ワシ殿は霊峰大山に向かって飛びたった。



(終わり)




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相模の河童さくらの宴へ

相模の国に相模川にすむ、太郎河童はいつも一ぴき、孤独で寂しい日々を送っていた。
「あぁ~誰か、仲間がこないかなぁ」
「一ぴきじゃ、寂しくて気がおかしくなりそう」
「話あいてが欲しい、あそび仲間がほしい~」
「一ぴきじゃ、生きていけない」
そこで、太郎河童は「大山の天狗様」にお願いすることを思いついた。
そして、願いがかなって、大山の天狗様のお使いワシ殿が、日本各地の河童族に、かっぱ語が入れたひょうたんを届けた。そして、天狗様のお使いのワシ殿は、相模の国の相模川へたどりつく乗り物として、ササで和船を作った。
河童族の足として使える船が何そうもできた。
河童族は大変喜んだ。
「この船があれば、遠い相模の国まで寝ていてもいける」
「ようし!春はさくらの咲く頃一族で相模の国へいくぞ!」
「相模の太郎河童に会うのが楽しみだ」
「大山の天狗様のお使いワシ殿、たしかにうけたまわった」
「この返事をひょうたんに吹き込みますので、お持ち帰りいただきたい」
ワシ「承知した」
大山の天狗様のお使いワシは各地のかっぱ族の返事をもって、太郎河童にとどけた。
「ありがたい!お使いワシ殿、ありがたい、ありがたい」
太郎河童は喜んだ。
やがて冬がゆき、暖かな春が相模の国におとずれた。
いよいよ、太郎河童がまちにまった、各地の河童族がやって来る,さくらの宴(うたげ)の頃となった。
さくらの花がつき始めた。
太郎河童はここ数日、相模川の河口の平塚まで遠征(えんせい)して、いまかいまかと待ち続けた。
夕映えが海側からせまってきた。
「今日も見えぬか・・・」
「いたしかたない、もどるか」
その時である、数そうの和船が点に見えた。だんだん河口にせまってくる。
「太郎どん、太郎どん!わしらじゃ~およびに参上!遠野のかっぱ族、参上!」
「太郎どん、太郎どん!わしらも、参上!筑前若松のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!島根の日野川のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!五島列島の河童族(ガータロー)、ただいま参上!」
数十隻の和船がぞくぞくと相模川河口に乗りいれてきた。どの船からも「ワァー」という歓声があがり、ある船はふなべりをたたき、拍子木に似た(かっぱ拍子木)を打ち鳴らし、また竹で作った横笛(かっぱ笛)を鳴らし、にぎやかに入って来た。
各船には色とりどりの長いのぼり旗が風にまい、美しくもあり、楽しげであった。
太郎河童は大いに驚き、涙をながして歓迎した。先頭の和船に乗り移り、河童族と抱き合い、かっぱ語で挨拶を交わした。
「よう、来ていただいた、本当によう来てくだされた!」
「この相模の国にようこそ、こられた!」
「ありがとうござる、ありがとうござる」
つぎつぎと船を乗り移り、各河童族と涙を流し、抱き合った。そうして、ひととおりの挨拶が終わると、先頭の船に戻り、声をはりあげた。
「ご案内つかまつる!」
「あとにつづかれよ! 
「いざ、いざ、まいらん、相模の河童さくらの宴へ」


(終わり)



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相模の河童まつり

相模の国の相模川にたった,一ぴきで住む、太郎河童。仲間が欲しくなり、大山の天狗様にお願いをしました。願いがかなって、天狗様のお使いのワシ殿が各地の河童に「太郎河童のひょうたんに入れた檄文」を届けてもらいました。
やがて、春はさくらの咲く頃、各地から河童族がかっぱ船に乗って、相模川にぞくぞくと集まってきました。
「太郎どん、太郎どん!わしらじゃ~およびに参上、遠野のかっぱ族、参上!」
「太郎どん、太郎どん!わしらも、参上!筑前若松のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!島根の日野川のかっぱ族、ただいま参上!」
「わしらも、参上!五島列島の河童族(ガータロー)、ただいま参上!」
数十隻の和船がぞくぞくと相模川河口に乗りいれてきた。どの船からも「ワァー」という歓声があがり、ある船はふなべりをたたき、拍子木に似た(かっぱ拍子木)を打ち鳴らし、また竹で作った横笛(かっぱ笛)を鳴らし、太鼓(かっぱ太鼓)を打ち、にぎやかに入って来た。
各船には色とりどりの長いのぼり旗が風にまい、美しくもあり、楽しげであった。
太郎河童は大いに驚き、涙をながして歓迎した。先頭のかっぱ船に乗り移り、河童族と抱き合い、かっぱ語で挨拶を交わした。
「よう、来ていただいた、本当によう来てくだされた!」
「この相模の国に、ようこそ、こられた!」
「ありがとうござる、ありがとうござる」
つぎつぎとかっぱ船を乗り移り、各河童族と涙を流し、抱き合った。
そうして、ひととおりの挨拶が終わると、先頭のかっぱ船に戻り、声をはりあげた。
「ご案内、つかまつる!」
「この太郎河童の、あとにつづかれよ! 」
「いざ、いざ、まいらん、相模の河童さくらの宴へ」
かっぱ船の船団は隊列をつくり、上流へ、上流へこぎ進む。
時は春。両岸のさくらの花が満開。大山に日が沈み始め、夕映えの中を進む。
さくらの並木に沿って、ぼんぼりが薄い灯りをともし、美しくさくらの花が映え、かっぱ船のかっぱ族もただ見とれていた。
やがて、相模川、中津川、小鮎川の三の合流地点に到着。両岸は見事なさくらの競演であった、そこが相模の太郎河童の住むところである。
「さぁ~おりられよ!方がた。この地が、わしの住む、かっぱ名で三流じぁ」
「わぁ~何と美しい国じゃこと!」
「悠々たる霊峰大山、そして清い流れの三流、それにつづくかっぱの大地,良きかな、良きかなぁ!」
太郎河童 「ここから見えるのが、かっぱ田。おいしいお米が沢山とれまする。」
「そして、かっぱ畑。ダイコンをはじめ、いろんな野菜がとれまする」
「そして、三つの川、鮎をはじめ、沢山の魚がとれまする」
大きな中州に、たくさんの席がもうけられており、各席にはダイコン漬け、胡瓜漬け、ナス漬けをはじめめ、沢山の漬物が積み上げられており、さらに鮎をはじめ、沢山の魚がところせましとおかれている。
また沢山のお酒が入った樽が置かれていた。
「お酒は地酒のかっぱ酒!」
「米から作った(米酒)、ぶどうから作った(ぶどう酒)、なしから作った(なし酒)、いもから作った(いも酒)、みかんから作った(みかん酒)」
「さぁ~さぁ~かっぱ酒。さかずきになみなみ満たして、杯をあげましょう!」
「ご一同!ご唱和をおねがいつかまつる!」
「かん、かっぱ!かん、かっぱ!」
「お~お~お~」
いよ、いよ、太郎河童の待ちに待った瞬間である。
たくさんのかっぱが声高らかに、杯をあげた。
相模の国、太郎河童の里、三流。人間界と接しているが、人間には見えないかっぱ族のまつりの始まりである。


(終わり)



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相模の河童まつり宴たけなわ
相模の国に大河相模川が流れています。相模川、中津川、小鮎川の三つの川が合流する地点に、相模のかっぱ村が「三流」があります。人間界には見えない、まぼろしのかっぱ村です。
春はさくらの咲く頃、各地から河童族がかっぱ船に乗って、相模川にぞくぞくと集まってきました。
両岸は見事なさくらの競演であった、そこが相模の太郎河童の住むところ「さんりゅう」である。
「さぁ~おりられよ!方がた。この地が、わしの住む、かっぱ名で三流じぁ」
「わぁ~何と美しい国じゃこと!」
「悠々たる霊峰大山、そして清い流れの三流、それにつづくかっぱの大地,良きかな、良きかなぁ!」
太郎河童「ここから見えるのが、かっぱ田。おいしいお米が沢山とれまする。」
「そして、かっぱ畑。ダイコンをはじめ、いろんな野菜がとれまする」
「そして、三つの川、鮎をはじめ、沢山の魚がとれまする」
大きな中州に、たくさんの席がもうけられており、各席にはダイコン漬け、胡瓜漬け、ナス漬けをはじめめ、沢山の漬物が積み上げられており、さらに鮎をはじめ、沢山の魚がところせましとおかれている。
また沢山のお酒が入った樽が置かれていた。
「お酒は地酒のかっぱ酒!」
「米から作った(米酒)、ぶどうから作った(ぶどう酒)、なしから作った(なし酒)、いもから作った(いも酒)、みかんから作った(みかん酒)」
「さぁ~さぁ~かっぱ酒。さかずきになみなみ満たして、杯をあげましょう!」
「ご一同!ご唱和をおねがいつかまつる!」
「かん、かっぱ! かん、かっぱ!」
「おぅ~お~お~お!」
いよ、いよ、太郎河童の待ちに待った瞬間である。
おおぜいのかっぱが一同に集まり、楽しく語らい、飲み、歌い、踊り、河童族の繁栄を謳歌する、かっぱ祭りである。太郎河童はこの「さんりゅう」でできる事を感激し、心から「大山の天狗様」に感謝した。
「さて、さて、ご一同、相模のかっぱ田でとれた、おいしいモチゴメでもちつきをいたしまする。お手伝いくだされ~」
「よう~し~おれがつく」
「おれも、やるぞ!」 「わたしも手伝うわ~」
多くのかっぱ衆がうすのまわりに集まる。
蒸したモチゴメがうすの中に入れられ、力自慢が杵でつく。
「えい!ペタンコ、えい!ペタンコ、えい!ペタンコ 」
掛け声がかかり、気合がはいる。つぎつぎと餅はできあがり、女衆がもちを、ちぎり、丸める。
相模のかっぱ餅のできあがり。畑の大豆から作った醤油をからめた「醤油もち」「ダイコンもち」「なっとうもち」「きなこもち」「あんころもち」
いろんな「もち」のできあがり。 
おいしい「もち」もふるまわれて、相模の国のかっぱ村「さんりゅう」のかっぱまつりさくらの宴も、宴たけなわであります。


(終わり)



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相模の河童村 三流
各地から集まった河童族のお祭り、「 相模のかっぱ祭り 」は三日三晩つづいた。宴もやっと終わりに近づいた。
遠野のかっぱ族、筑前若松のかっぱ族、島根の日野川のかっぱ族、五島列島の河童族(ガータロー)、の中から、この相模の「さんりゅう」に残りたいと、数十家族が名乗りでた。太郎河童は心から喜んだ。
「ええ、本当!夢見ているようだ!」 「各河童族の皆様衆、!よろしいかぁ~」
各河童族とも「おのおのの河童が残りたいという名ならば、自由だ」
「太郎河童どんにおまかせいたそう」 「太郎どん、残ったかっぱ族まとめて、どうか、よい村をおつくりなさい」
「ありがとうございます! ありがとうございます! 」
太郎河童は何度も、何度も、こうべを下げた。
さくらの宴も終了した。
翌朝 、各河童族の旅だちのときを向かえた。笛がながれ、旅だちの太鼓がどこかもの悲しそうにながれ、各船団に帆が張られ、一そう、また一そう帰途についた。
三流に残った村河童が見送る。
河童族の挨拶である、「 両手をあげ、大きく左右にゆつくり振る」
つぎ、つぎ、とかっぱ船は相模の国の相模川、「 かっぱの村、三流 」を出こうしていった。
いつまでも、いつまでも、三流の住河童は手を振りつづけた。

かっぱ村の村づくりが始まった。
太郎河童が村長に選ばれた.百かっぱをこえるかっぱ数になった。村の取り決めごとが話しあわれ、村のかっぱ村の掟(おきて)が作られた。
「我々、河童族は子々孫々に渡るまで生き残り,繁栄しなければならない。」
「人間界と和し共に共栄共存をしなければならない。」
「河童族の団結をはかり、お互いに助け合い、仲良く、河童族の誇りをもって生きること」
「 物は分けあい、奪いあわないこと」
また各かっぱの役割が決められた。
魚の漁にいくかっぱは,川魚班、海魚班に分かれ担当が決められた。野菜づくり、米づくり、お酒づくり、大工,お天気予報、踊り、宴会、それぞれの担当が決まり・活躍が始まった。
相模の太郎河童の永年の夢が、実現した。
相模のかっぱ村「三流」、人間界には見えない、かっぱ村である。


(終わり)



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河童の名工 甚五郎

相模のかっぱ村「三流」、人間界には見えない、かっぱ村が相模の国、相模川、中津川、小鮎川の三つの合わさる所に、かっぱ村「三流」、悠々とした霊峰大山のふもと,肥沃(ひよく)な大地、三つの川の清流にあります。人間界には見えない、まぼろしの別天地です。
かっぱ村には名人、上手、といわれる、かっぱが住んでいます。なかでも、「天狗様の木彫り」「かっぱの木彫り」にかけては名人といわれている、名工がおります。
その名は「甚五郎(じんごろう)」
「鮎の木彫り」「鯉の木彫り」「たぬきの木彫り」などは、すばらしいものがあります。
名工 甚五郎は天気の良い日は、三つの川のそばで木彫りに使える木を探しにいきます。
クス、ホウ、ベニ松、ヒノキ、サクラを求めて今日も朝早くから、かっぱ舟をあやつり、相模川の上流に上がっていました。
甚五郎(じんごろう)は人に化けるときは、いつも年寄りのきこりに化けます。一本のヒノキに目がとまりました。
「ほう~これはよい木だ、おれをよんでいる」
「おれに彫ってくれ、彫ってくれ、まねいている」
「さて、この木は、おれ一人では手にあまる。むりだ」
「どうするか~どうするか~」
「そうだ、村人に頼もう」
甚五郎は三田村の農家を訪ねた。
「となり村のきこりじゃが、木を一本切るのを手伝うてほしい」
「どこの木じゃ?」
「あそこの、川ぞいの山のヒノキじゃ」
どれ、どれといいながら、家の外に出た。
「あんれ~、あれは、じっちゃまの山だ」
「じっちゃまに聞いてみないとなぁ~」
「じっちゃま!じっちゃま!お客さまじゃぁ~」
じっちゃまが杖をついて、戸口に出てきた。
「なんじゃぁ?」
「じっちゃま、この白ひげのおとしよりが川ぞいのヒノキを欲しいといっていなさる」
「おれに木を切るのを手伝ってくれとなぁ」
じっちゃまはうさんくさそうに、白ひげをみつめた。
「売ってやらんこともないが、あのヒノキは上等でなぁ、ちっと値がはるぞ~」
「え、ヒノキは売り物なのか?」
「おまえ様~あのヒノキをただで、切ろうとしているのかい?」
「金は持っていない」
「え~え~驚いた」
「どこの人だぃ~」
「あんまり見かけないお人だが・・・」
「あのヒノキがおれをよんでいるのじゃ」
「切ってくれ!切ってくれ!彫りあげて、魂をふきこんでくれ!」と叫んでいるのじゃ。
「わぁぁ おったまげた!」
「木の声が聞こえるのか?」
「ああ、聞こえる」
「そうか、たいしたお人じゃ」
「名はなんともうす?」
「木彫り士 甚五郎 」
「はて? どこかで、聞いたお名じゃ」
 じっちゃまも村人も顔を見合わせて、困った表情をした。
「甚五郎さん、このヒノキも丹精こめて育てあげた木じゃ。ただでは譲れない」
「そうか・・・」
すると甚五郎は腰につけた、袋から「真珠玉」をとりだした。
「どうじゃ、この真珠玉でどうじゃ!」
「わぁ!何とすばらしい真珠玉じゃ!」
「この袋の中に沢山入っている、袋ごとあげる」
「これで売ってくれ~」
「わぁ~こんないっぱい、驚いた」
「解った!売ろう。そして木の切だしも手伝う」
こうして村人とかっぱの甚五郎のヒノキ売買が成立した。
そして木は無事切りたおされた。相模川に浮かんだ。

「甚五郎どん、このヒノキを彫りあげたら、一体、村にくれないか」
「大事にするから覚えていてほしい」
「あい解った、世話になりもうした。それではさらばでござる」
かっぱの甚五郎は大きなヒノキの丸太の上に乗り、かっぱの里「三流」に帰っていった。





(終わり)



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名工甚五郎とかっぱ堂
   

相模のかっぱ村「三流」の名工 甚五郎、相模川の上流で村人から「真珠玉 」と交換してきたヒノキの名木、じっと見つめ、あれこれ思案していた。
「この木は何になりたいのか?このおれに何を彫って欲しいのか?」 
名工 甚五郎は目をつぶり、雑念(ざつねん)をはらった。
「ふぅ~っ」と心に浮かんだ。「そうだ、かっぱ村の村長、太郎河童を彫ろう」 「この村に招いてくれた、太郎河童を彫りあげよう。よし決めた!」
甚五郎は一挙に荒彫りから入り、太郎河童の全体像を彫りあげた。その彫りあげる速さ、力強よさ、正確さ、「一木造り」さすが名人芸である。
甚五郎のかっぱ小屋で、一心ふらんに彫りつづける。何日も何日も、彫り続ける。寝食を忘れ、ただ、ただ、彫りつづける。
「やっと、できた。どうにか気にいったものができた。ありがたい、木に魂(たましい)がやどった」
そっと甚五郎は木彫りの河童を立ちあげる。そして、じっとながめ、相模川の聖水を桶にくみ、出来上がったかっぱの頭から水を流し喜びの呪文(じゅもん)を唱える。「相模川の聖水よ、願わくば力を与えたまえ!喜びと、平安、慈悲の木像となりえんことを、カッパ、カッパ!」
そして出来上がった木像をもって、「三流(さんりゅう)」の村長の太郎河童の家に見せに行った。
「村長、村長! 甚五郎じゃ~」と大きな声で村長の太郎河童に呼びかけた。
「お~おぃ~どなた様じゃ?」
「わしじゃ~ 甚五郎じゃ」
「お、おぅ、あぁ~何と大きな、立派な河童像だこと!」
「村長! おぬしの像を彫った」
「え、え~わしの像とな・・・」
村長はまじまじと、かっぱの像をみっめた。
「何と、生きているようじゃ。これがわしか…。魂が感じられる」
そこえ噂を聞いて、村の衆が集まって来た。
「何と!本当に生きているようじゃ・・」
「村長にうり二つじゃ」
「何と立派だこと!」
村長の太郎河童が自分に言い聞かせるように口を開いた。
「この家に飾るには、あまりにもったいない。こんな「魂」のはいった立派なかっぱ像、どうしようか?そうだ、堂を建て、そこに安置しょう」
そこで、皆の衆に話かけた。
「皆の衆、この立派なかっぱの木像を安置する堂を建てたいと思うがどうだろう」
大工の足助「いいね~いいね~やろうじゃんか」
川漁の担当 い吉「皆で力を合わせ、ぱっと、やろうじゃんか」
海漁の担当 う吉「めでたい、めでたい、やろう!」
織物の担当 き絵「いいお話、ぜひ仲間に入れてくだしゃんせ」
という訳で、かっぱ村の衆、皆で堂を作ることになりました。
そこでどこに堂を建てるか、太郎村長は考えた。
 ふと、甚五郎の話を思いだした。木の切出しに力を貸してくれた、人間界の村人の話が頭に浮かんだ。村人も甚五郎の木彫りを一体欲しいといっていた。
「そうだ。河童界と人間界の境にかっぱ堂を建てよう」
「わが河童族と人間界の融和ができる場所としょう」
早速、太郎村長は村の衆に集まってもらい、その話をした。
村の衆は皆、賛成をした。
そしてかっぱ堂の建築が始まった。村の衆、総でのにぎやかな作業である。皆、生き生きと働いた。
甚五郎はさらに、堂の欄間(らんま)にかける木彫りの彫りに熱中した。数ヵ月後、堂は完成した。
村の衆総で完成を祝わった。それは、それは、見事なお堂である。そして中央に安置された「太郎河童の像」はまるで生きているようなすばらしい像である。欄間に飾られた彫りものに皆の目が向けられた。
「ほぉ~ 鮎が滝を登っている、いま跳ねているようだ」
「かっぱもすばらしいが、この滝上りの鮎も見事、見事!」
甚五郎は皆の衆の賞賛(しょうさん)の中にいたが、ただ、木彫りをじっと見つめるのみであった。
人間界と河童界の境界に建つかっぱ堂、人間界からは見えないまぼろしの堂であった。ただ、人間でも、約束を守り、正直者、心やさしき者、善人には、見える境界のかっぱ堂である。





(終わり)



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太郎河童と小童(こわっぱ)
 

相模の国の河童村、「三流」の村長 太郎河童は毎日村を見回るのを日課としていた。
三流の一つ、中津川を見回った時の事であった。一人のこわっぱが魚釣りをしていた。その日は上流でかなりの雨が降り、水かさもじょじょに増し始め、流れも急に早くなりはじめていた。
「今日はあまり釣れないなぁ、雨も降ってきたことだし、そろそろ帰ろうかなぁ~」
その時である。
急にあたりがあり、竿が弓なりになった。強い引きがあり腰を落として、足をふんばった。しかし足がすべり、身体ごと川に「ドボン」と落ちてしまった。流された。
「あっ! 危ない!助けないと!」
太郎河童は急いで、流れの速い川の本流に潜って「こわっぱ」に近づいた。
こわっぱは水中でもがいていた。太郎河童は身体を抱き水中から引きあげた。他のかっぱも手伝い、河童村「三流」の岸に引き上げた。こわっぱの意識はなかった。
「さぁ~水をはかせよう!」皆、手伝ってくれ。
「心の臓が止まっている!河童族の秘伝(ひでん)の特効薬を使おう!」
かっぱ村の名医の赤ひげがこわっぱの口を開け、特効薬を流しこんだ。
「これでいい~もうすぐ意識をとり戻すじゃろう」
こわっぱを太郎河童の家に運ぶ。
しばらくするとこわっぱが意識をとり戻し、目を開いた。
「ここはどこじゃ~」
「何故、おれはここにいるのじゃ」
「おぬし達はだれじゃ?」
「見慣れない顔じゃが?」
村長の太郎河童が語りかける。
「おぬしはこの上の中津川で釣りをしていて、足を滑らせ川に落ち、意識をうしなった」
「覚えていないか・・・」
「そぅ、いわれれば、確かに釣りをしていた・・」
こわっぱは少しづつ思い出してきた。
「そうだ!すべって川に落ちた。あとは、覚えていない・・・」
こわっぱはもう、特効薬の効能出、起き上がることができた。
「どこか痛いところはないか?」
「うん、うん~どこもない・・」
「ところで、わっぱ~おぬしの名は何という?」
「どこの村の者じゃ?」
「いくつ、じゃ?」
こわっぱが答えた。
「おれの名はうし松、三田村の者じゃ。歳は九才じゃ」
「とと、かかはいるのか?」
「ととはおれが三才のときはやり病でなくなった」
「かかはいま、心の臓が悪く働けない」
「おれと兄貴、妹が働いて、めしをくっている」
太郎河童が尋ねた。
「おまえの仕事は何だ?」
「おれは朝早く起き、まず川釣りで魚を釣り、町にもっていって売る、そのあとしじみを売って歩く」
「兄貴は八百屋の手伝い、野良の手伝い、重い荷物運び、いろんな仕事をしている」
「兄貴はいくつじゃ?」
「十八じゃ」
「妹はいくつじゃ?」
「六才と四才じゃ」
「そうか・・苦労じゃなぁ・・」
「魚釣りをしていて、川におちたのじゃなぁ・・・」
「まだ、幼いのになぁ・・・」
うし松はもとの元気を取り戻した。
「うし松、元気をとり戻したようじゃなぁ~よかった」
太郎河童が大きい白い透きとった球をとりだした。
「これは、どこでも見とうせる球じゃ」
「おまえの家を見てみょう」
「あれ、幼い妹が泣いている、腹をすかしているようじゃ」
「かかが、あやしているが幼い妹は,泣き止まないようじゃ」
「あぁ~食べるものがないようじゃなぁ・・・」
うし松はじっと透し球をみっめていた。
「ここは、河童村、「三流」わしが村長の太郎かっぱじゃ」
「わしがおまえを助けた、これも何かの縁じゃろう」
「うし松、おまえは正直者で、働き者、親、兄弟おもい、兄弟そろって善人じゃ」
「おまえ達、兄弟にかっぱ村「三流」の特別通行証を与えょう」
「かっぱ村には自由に入りことができる」
「かっぱ村で出来た、野菜、漬物、海の魚類、川の魚類、物産の販売を許そう」
「但し、一つだけ、条件がある、われわれ河童族には作りだすことが出来ない、甘味の原料「砂糖」を交換で運んで欲しい」
「どうじゃ、うし松、やるか?」
「ほんとうに、かっぱ村の品じなをあつかえるのか?」
「そうだ、おまえ達兄弟にまかせる」
うし松は少し考えて、大きな声で答えた。
「やります!やらしてください!こんないい話はない!」
「兄貴もぜひと、いうとおもいます」
「そうか、よかった」
「それでは、かっぱ村「三流」の入村の証、真珠の腕輪をさずける」
「そして、おみやげに米、もち、野菜 漬物、魚、たくさんもっていけ」
「ありがとうでござる、夢を見ているようじゃ!」

この日境に、人間界と河童村「三流」との交易がはじまった。





(終わり)



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かっぱ村三流のお土産
相模の国の河童村「 三流 」人間界からは見えない幻のかっぱ村。そこへ出入りが許された、うし松、うま松兄弟、河童族と人間族との交易が始まった。
うし松、うま松兄弟がお日様が上がると同時にかっぱ村「三流」に向かう。
大きな荷車を引きながら、じゃり道をいきおいよく進む。人間界と河童界分ける境界に来て、かっぱ界に入る「三流」の入り口で通行手形の真珠の腕輪をかざす。すると見た事ないかっぱ界の三流村の風景が目に入ってくる。
うま松「何と~こんなところにかっぱの国があるとは。何と~広い、田園風景だこと・・・、何と~おおぜいの河童がいること・・・」
うし松「さぁ~太郎村長の所へいこう」
太郎村長の家の前にはすでに、村長がでできて、二人を出迎えに立っていた。
うま松、うし松が深ぶかと頭を下げる。
「よう、きた、よう、きた、待っていたぞ」
「先日は弟が危ないところを助けてもらい、ありがとうごぜいました」
「また、沢山のいただき物をし、本当にありがとうごぜいました」
「おかあ、からも、くれぐれ宜しくとのことです」
「そうか、そうか、うし松、どうじゃ、もう身体はよいか」
「へい、もうすっかり、よくなった」
「それは、よかった。」
荷台の上から、砂糖の袋を下ろす。
「さぁ~村長様、少ないが、砂糖です」
「受け取ってくだされ」
「これは、貴重な物を、かっぱ族にとっては大変貴重な物じゃ。ありがたくもらいますぞ」
「ところで、うま松うし松、商いをする場所じゃが~」
「いい場所があるか?」
「へい、厚木宿の、人どうりの多い場所の、地べたに並べて売ろうとおもいます」
「そうか、路上でするのか・・・」
「雨の日は困るのではないか?」
「屋根のない所では、品物が傷むのじゃないか?」
太郎村長は、川漁の担当い吉を呼び、いいつけた。
「川の中の保管庫から、真珠球を桶にいれもって来てくれ。それに、かっぱ村の名医 赤ひげを呼んできてくれ」
「お安い、ご用!がってんだ」
やがて名医の赤ひげがやって来た。
「村長、お呼びですか」
「赤ひげ先生、うま松、うし松のかか様が、心の臓の病で床について、いるそうじゃ。先生、河童族の特効薬をせんじてやってくだされ」
「ところで、うま松、うし松、かか殿の病だが、どんな具合じゃ?詳しく、聞かせてくれ」
赤ひげ名医がうま松、うし松の話を聞いて、診断をした。
「ほう、そうか、解った、まかせくれ」
赤ひげ先生は特効薬づくりのため、診療所へ戻った。
入れ替わりに、い吉が桶一ぱいの真珠球を持ってきた。
「村長、真珠球を持ってきた、どうするのか?」
太郎村長が真珠を入れた桶を受け取った。
「うま松、うし松これをおぬし達にあげる。この真珠球を売って、お金にして、お店を買え。路上の商いでは、いろいろ面倒がおきる」
ニ人の兄弟は顔を見合わせ、驚いて、村長を見つめた。
「本当にこんなに沢山の真珠球をいただいていいのか」
「びっくりだ!」
「よい、よい、末長く、おぬし達とかっぱ村「三流」との交易のためじゃ。えんりょ、するな、取っておけ」
「何と、店が持てるのか、夢を見ているようじゃ」
そこへ、名医の赤ひげが特効薬を持って現れた。
「この特効薬は心の臓にきく、かっぱ界の薬じゃ、持っていって、かか様に飲ませろ」
「すぐに、きくはずじゃ」
「ええ~、なにからなにまで、ありがたや、ありがたや」
うま松、うし松は手をとり合い、涙を流し喜んだ。
沢山の野菜、漬物、川魚、海魚、を荷台に積んで、かっぱ界を後にした。





(終わり)



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厚木宿のかっぱ屋
    

相模の国に相模川、中津川、小鮎川の三つの川が集まる所に河童村「三流(さんりゅう)」がある。
村長は太郎かっぱで、多くの村の衆が住んでいる。
三流は人間界から見えない、まぼろしのかっぱ村です。
足をすべらせ、川で溺れていた、村人のうし松を助け、これをきっかけに、兄のうま松の兄弟に、かっぱ村に自由に通行する、手形を渡した。そして、かっぱ村の野菜、漬物、川魚、海魚類の物産の交易を認めた。そして、厚木宿に店舗を出すために真珠球を渡し、店舗をかまえるお金に変えるように言い聞かせた。兄弟は早速、真珠球を小判に代え厚木宿のお店を探し始めた。
「兄ちゃん、夢みたいだ。河童村「三流」の村長太郎かっぱからいただいた、真珠球がこんなに沢山の小判と代えられ、お店を買う代金になるとは」
「うし松、この事はだれにも話してはならないぞ。海で集めたという事にして、かっぱ村の話はしてはならないぞ」
「それにしても、赤ひげ先生にいただいた、特効薬があんなに早くきくとは、ありがたや、ありがたや!」
「かかも元どおりに元気になり、皆、喜んでいる」
「うし松、かっぱ村の皆の衆のご恩は忘れてはならないぞ」
「うん、うん。けして忘れない。かっぱ村のためになるように、がんばるよ!」
「そうだ、そのいきだ」
口入れ屋の斡旋により、厚木宿の一角に店舗を購入できることとなり、いよいよ、開店の運びになった。
店の名前は「かっぱ屋」扱う品は、野菜を中心に漬物、である。八百屋である。
新鮮で、値段も安く、開店いらい評判となり、連日売り切れで、押すな、押すなの人気店となった。
並んでいる、お客様からいろんな声が上がる。
「かっぱ屋さん、いつも品切れでは、もったいない、もっと店頭に並べてくれ」
「こんな、立派な野菜、漬物、どこで取れるのだい?」
「もっと、作ればいいじゃないか」
「毎日でもくるよ、品切れだけはかんべんしてよ」
お客さまの評判はますます上がってゆくのだった。

「太郎村長と相談をして、この付近の農家にも,栽培方法を伝授してもらい、相模の名品にしよう」
「それは、いい考えだね!」

今日も相模の国、厚木宿の「かっぱ屋」には多くのお客が押しかけている。




(終わり)



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かっぱのなみだ 1
むかし昔、相模の国の厚木村を流れる、相模川にいたずら者のカッパが住んでいました。
名前は太郎カッパと言い、相模川にかかる、もぐり橋の近くを寝ぐらにして、橋を渡る村人にいたずらをして、ひまをもてあましていました。
ある日のことです。夕暮れがちかずき、あたりが暗くなり始めたころ。
厚木村のほうから、にぎやかなかねや太鼓、笛の音と村人の楽しそうな声が聞こえてきました。太郎カッパは川岸にちかずき、土手の上からにぎやかそうな、広場のほうを見ました。淡い色のきれいなぼんぼりが灯り、高い舞台が設けられていました。その周りを村人が楽しそうに踊っていました。またたくさんの露店が立っていて、おいしそうな臭いが太郎カッパの所まで、とどいてきました。
「 あぁ おれも村人と同じように、踊ったり、飲んだり、食べたりして楽しみたいなぁ」
「ああぁ・・ だめか・・・カッパでは相手にされない・・」
「 おれ人間になれたら、いいのになぁ・・・」
「 なぜ、おれは、カッパなんだ」
「神様はふこうへいだなぁ~」
「それに、おれ今 一ぴき」
「 さびしいなぁ・・・」
「いいな~人は」
太郎カッパはとぼとぼと、ねぐらもあるもぐり橋のほうにもどって行きました。
もぐり橋に座り、聞こえてくる、祭りの楽しそうな音色を聞いていました。
「 ああぁ~なんでカッパなんだ」
「人になりたいなぁ~」
「自由に好きなところえ、好きな時間いける、人間がうらやましい」
太郎カッパは橋のふちに座り、足をばたばた、してくやしがっていました。
するとその時です、年老いた白ひげの人がこっこっとつえをついて、橋を渡ってきました。
背中をむけている太郎カッパのところで立ち止まりました。
太郎カッパは振り返りません。
じっとしていると、優しい声で
「 これこれ、そこのカッパ、そこで何をしておる」
「ずいぶんとさびしそうじゃな」
「 どうしたのじゃ・・・」
「ほっといてくれ」
「そうか・・」
「それじゃ、行くとするか」
太郎カッパが振りかえった。
じぃっと、その老人を見つめた。太郎カッパが口を開いて。
「おぬしは見かけぬ顔じゃな」
「どこの村の者か?」「どこから来たのか」
すると、白ひげの老人は手の平を高くあげ、一本の指を天高く指した。
「あそこ、からじゃ」
太郎カッパは天を見上げて、
「おぬしは空から来たのか?」
「空のどこからだ?」
老人は笑いながら、答えた。
「わぁ ははは。天からよ」
「 え~天から来たのか?」
「どうやって・・・」
「 雲に乗ってじゃ」
「え~え、え。本当か~」
「おぬしは仙人(せんにん)様か」
「そうじゃよ」
「ヒゲ仙人じゃ」
「そうか、そうか、それじや、俺の願い、聞きとどけてくれますか」
「何じゃ。話してみょ」
「俺は孤児。いつも、一人で寂しい」
「何も楽しいことは無い」
「いつそのこと、人間になって、自由にあっちこっちいって、気ままにくらしたい」
「村の人みたいに、祭りにいって踊ったり、おいしい物を食べたり、いろんな所、見て歩きたい」
「人間になりたい!」 「人にして下さい!」
「かっぱは寂しすぎる・・・」
じっと、白ひげ仙人はかっぱの話を聞いていた。
「そうか、そんなにかっぱがいやか」
「そんなに人になりたいか・・」
「なりたい、人間になりたい!」
「どうか、人間にして下さい」
白ひげ仙人は目を閉じて、ふっと~考えた。
「さて、どうしょうか・・このかっぱの願い聞き届けてもよいが・・・」
「このかっぱのために、はたしてなるかな~ぁ・・」
白ひげ仙人は目を開け、かっぱを見つめた。
「そうか、それほど言うならば、お前の願い聞き届けてもよいが」
「え~え、本当ですか!」「やった、やったぞ」
「とうとう、俺は人間になれる、なんと幸せなんだ!」
白ひげ仙人は静かに太郎カッパに語りかけた。
「よいか、かっぱ、よく聞け。明日の朝、このもぐり橋に最初に朝日があたる時刻にこの場所にきょ。その時まで、お前の考えが変わなければ、おまえの望みをかなえてあげる」
「明日まで、じっくり考えよ。さらばじゃ」
すると、突然、白ひげ仙人の姿は消えた。
太郎カッパは喜びのあまり、もぐり橋の上に両手を伸ばし、大の字に寝て天に向かい、大声出した。
「とうとう、やった!俺の長年の夢がかなう」
「運が向いてきた。明日だ、明日だ」
「人間になれるんだ」
翌日、朝日が昇る前から、もぐり橋で白ひげ仙人を待った。あたりがだんだん明るくなってきた。朝一番のまぶしい光が指して、太郎カッパの顔を照らした。その時である、突然、ぱぁ~つと白ひげ仙人が現れた。
「太郎かっぱ、どうじゃ、考えは変わらないか」 「人間になりたいか」
白ひげ仙人は静かに語りかけた。
「はい、どうしても、人間になりたい。考えは変わりません」
「そうか、それでは太郎カッパ、お前を人間にしてあげよう。」
「わぁ、あ、本当ですね!わぁはは、は、うれしい、うれしい」
「今すぐなれるのですね」
「そうせくな」
「太郎かっぱ、よく聞け」
「一つだけ、条件がある」
「え、条件ですって?」
「条件って、何です
「それはなぁ・・」
「なみだじゃ」
「え、なみだですか?」
「そうじゃ、なみだじゃ。悲しいときに、泣く、なみだじゃ・・・」
「うれしいとき、かんげきしたとき、喜びのときに流す、はみだはよいが、苦しいとき、悲しいときに流すなみだじゃ」
「え、苦しいとき悲しいときの流すなみだですか?」
「そうじゃ、苦しいとき悲しいときに泣くまえぞ」
「え~泣くとどうなりますか?」
「元のかっぱにもどるぞ」「それでも、よいか」
人間になりたい太郎カッパはすぐに、答えた。
「苦しいこと、悲しいことに会わなければいいんだ」
「はい、泣きません。楽しいバラ色の毎日を送ります」
「心配ありません」
「さようか・・・」
「そのかくごであれば、望どうりに人間に変えよう」
白ひげ仙人が長いつえを振った。
白い煙が吹き出し、太郎かっぱの全身が包まれた。しばらくして白い煙が薄くなり、太郎かっぱの全身が見えてきた。
頭のお皿も、背中のこうらもなくなり、とがっていた口も平らになり、普通の男の人間に変身していた。
太郎かっぱは川面に自分の全身を映して見た。
「わ、わ~あぁ、人間になった! 人に生まれ変わった」
「やった、やった、人間さまじゃ」
「これで自由に、どこでもいかれる。うれしい、うれしい最高の一日じゃ」
太郎かっぱは、はしぎ回った。
じっと白ひげ仙人はそのようすを見ていた。
太郎かっぱが落ち着いたところで、声をかけた。
「太郎かっぱ。いや太郎。人間になった太郎よ」
「けして忘れるで、ないぞ。悲しい涙のことを」
「それでは、良き人生を送れ、さらばじゃ」
「仙人さま、ありがとうございます。ありがとうございます」
白ひげ仙人は音も無く消えた。
「わぁ~これからのことを考えると、わくわくする」
「さぁ、人間、人間、人間になるぞ」と叫びながら、太郎は、早速、村をめざして歩き始めた。
いつも、川から見てた一番近い村、厚木村に入った。
厚木村は小さな村であったが、家、家から朝げの煙らが上がり、生き生きとした村人の暮らしが感じられた。川から見ていた、割合、大きなかやぶき屋根の家に入った。軒先に回った。初じめて家の中をのぞいた。
「うぁ~人間の家って、こうなっていたのか・・すげぇ・・」
太郎はずっと立ち止まり、しげしげと家の中を見まして、ひとりで感心していた。この家は漁期には相模川で川魚をとる川漁師で、漁がないときは、田んぼ、畑をやる家であった。




(2へつづく)



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かっぱのなみだ 2 人間になったかっぱ
太郎は縁側に座った。ちょうどそこえ、この家の娘のゆうが、縁側にほしてある、
川魚の干し物を取りに来た。
「 あんれぇ~あんたはだれじゃ」 「ここらで、見かけぬ顔じゃが・」
「そこで、何をしているのじゃ?」
「おかぁ~ だれかお客様じゃぞ」
あわてて、奥から、この家のおかみさんのしげが顔を出した。
「あれまぁ、おまえ様は誰じゃ、どこの村の者じゃ」
「 どこから来たのじゃ?」
大きな声を聞きつけて、この家の主人のどん平も息子のりゅうをつれて、やって来た。 た。
「 おかあ、どうした。何があったんだ」
どん平も、おかぁの指さすほうを見た。驚ろいた。
「 あれれ、れ、おまえは誰じゃ。どこから来た?」「どこの村の者じゃ?」
どん平も、しげ、ゆう、りゅう、初めてみる顔をまじまじとながめていた。
人間になったかっぱ太郎は、汚れた穴の空いた着物に、はだしでおもらいさんのよ
うに見えた。しかし、顔はきんせいがとれ、堂々とした体格、澄んだ目、どこをと
っても、初々しい若者であった。
「おまえの名は何という・・どこの者じゃ?」
立ち上がった、太郎がよく聞き取れない声で言った。
「太郎」
「おまえは太郎というのかえ・・・」
太郎はうなずいた。
「それでどこから来た?」
太郎は相模川のほうを指さした。
「そうか、川むこうの村からきたのか」
どん平は川向こうの村から来た若者と思っていた。
「それで、ここに何しに来たのか?」
太郎は何も答えなかった。しばし沈黙が続ずいた。
「おまえさま、もしかして、よく言葉がしゃべれないと、ちがうか・・・」
と、しげが聞いた。
太郎が軽くうなずいた。
「そうか、無理してしゃべれなくともいいょ」
「言葉が解ったらうなずくか、身振りして答えな」と優しく、しげが話した。
「おまえさま、お腹がすいているんじゃないか」
太郎はうなずいた。
「ゆう、この人にふかしたお芋と麦めしと焼き魚を持ってきておあげ」「はぁい~」
ゆうは食事の仕度にむかった。
「りゅ、早く膳のしたくをしなさい」
「さあ、さ~おあがり、おあがり、膳についたり、ついたり」
しげに促されて台所にあがり、膳の前に座らされた。太郎は膳につくのも初めてで
あり、物珍しそうにながめ、膳や器にさわったりし、不思議そうにながめていた。
りゅは太郎のようすをみて、面白そうに笑っていた。
太郎はおいもを、手にとって珍しそうにながめ、口にもっていった。
「むしゃ、むしゃ、」ととてもおいしそうに食べ、ざる一杯のおいもを
、おしつに残っていた麦めしも、焼き魚も「あっ~」というまに、たいらげた。
みごな食いぷりであった。
しげ「よっぽど、お腹がすいていたのね」 
どん平も「すごいね、見事だね。あっぱれ、あっぱれ」
ゆう「そんなに急いで食べて、身体に悪いは・・」
りゅ「 はしの持ちかたもすごく変わっている。おもしろい、おもしろい」
しげ「 ところで、太郎さん、おまえさまはこれからどこえ行くつもりかえ」
どん平「 ゆくあてが無いのなら、少し、ここにいたらどうじゃ」
    「 これから、相模川の漁をいそがしくなる、おまえの身体は強そう見
える。わしの手つだいをして、それから考えたらどうじゃ」
りゅ「そうしたら、そうしたら、それがいい、それがいい、」
しげ「 そうされたら、おまえさまのためになるなら」
ゆう「 そうじゃねぇ、おまえさまは、言葉も不自由しておいでじゃ。ここで練
習して、それから何でもおやりになったらいい」
太郎はうなずいて、頭を下げた。
「さぁ、そうと決まったら、ゆう、りゅう、納屋をかたずけなさい」
「 寝床を作ってあげなさい。古着をもってきなさい」
「さぁ、そこの井戸にいって、身体をあらいなさい。着古した野良着じゃが、洗
ってある、着替えなさい」
家族みんなが、太郎のために忙しく立ち回り、太郎の人間になった一日が終わろう
としていた。翌日、早朝から起き、納屋から元家のほうえ歩いていった。
農家の朝、早く。すでに家族全員起きて、おのおのの仕事をしていた。
太郎が頭を下げた。
ゆう「 太郎さん、起きたら、あいさつをするのよ」
  「 おはようございます。て、言って、頭を下げるのょ」
  「 さぁ、言ってみて」
太郎「 おはよう・・おはようございます」
ゆう「 そうよ、そうやって少しづつ、練習するといいわ」
  「私が教えてあげる」
りゅう「おれも教えてあげる」
しげ「さぁ、朝後はんょ、生たまごとなっとう、それにお漬物よ」
りゅう「なんだ、いつもと変わらないじゃないか」
ゆう「あたりまえでしょ、食べられるだけ、幸せなのょ」
どん平「あはは、は、そうじゃ、そうじゃ」
いつもの一日が始まった。
今日は相模川で、あゆ漁を行なう日であった。
「さあ、太郎。あゆ漁に行くぞ。おれの後をついて来い」
二人はすげ笠をかぶり、投網を肩にかけて、相模川に向かった。
川に着いて、どん平が投網を投げて見せた。太郎はじっと見ていた。
どん平が何回も投げてもあゆは入っていなかった。
どん平は投網の投げ方を太郎に教えた。最初はなかなか出来なかったが、少しづつ
網が広く広がるようになってきた。
どん平は何回も投げたが、あゆは一ぴきも入っていなかった。
太郎はどん平に指さして、場所を変えた。



(3へつづく)



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かっぱのなみだ 3 人間になったかっぱ~町にて~
太郎が荷車を引き、しげとゆうが後ろから荷車を押して、厚木の町の市場に着いた。町に入ると太郎はキョロ、キョロ物珍しそうに、あっちこっちを見回していた。太郎にとって、人間になって初じめての、たくさんの人を見る機会であった。緊張と面白さとうれしさで興奮していた。
「太郎、太郎、荷車から魚と野菜をおろしなさい。魚はこの台の上に種類別に形よく並べなさい。野菜はきちんと積み上げて、体裁よく並べなさい」
ゆうが日よけの大きな笠をさし、太郎が魚と野菜を並べていった。
季節は初秋であったが、まだ日差しは強く魚は新鮮なうち、短時間に売らなければならなかった。ささの葉を魚の上におき、日差しが直接、当たらないように気を使わなければならなかった。
「たぁ~ちゃん、まず魚の名前を覚えてよ。これが、あゆ、おいかわ、うぐい、はや、ふな、この籠の入っているのがどじょう、うなぎ」
「さぁ~ひとつずつ、ゆくわよ、これがあゆ、言ってみて。そう。次はおいかわ、うぐい、どじょう、うなぎ」
「 うまい、うまい、たぁ~ちゃんは飲み込みが早い、すごいわ!」
太郎は少こしずつ、人間の言葉を吸収し覚え始めた。
「 これが、かぶ、やまいも、にんじん、じゃがいも、そして大根」
太郎は好物の「だいこん」と言って手に取り、何回もつぶやいた。
「さぁ、つぎは売り方よ、こう言うのよ」「いらっしやぁ、いらっしやぁ、今朝取れたての魚と野菜。どれも新鮮。安いよ」
「いらっしやぁ~だけでもいいよ」
太郎は「いらっしやぁ~」と声にしてみた。何回も言っているうちに上手に声がだせるようになっていった。
町に人、村の人が太郎の奇妙な声に気ずいて、だんだん人垣が出来て、魚や野菜が飛ぶように売れた。
町の衆「しげさん、こんな大きな息子がいたのか?知らなかったょ」
   「 ずいぶん、元気な若者じゃな。男前だし魚売りにはもったいない」
太郎はすっかり町の人気者になった。
しげ「 あっ~いう間に全部さばけた。太郎のおかげじゃ。何か、ご褒美をあげないといけないね」
ゆう「そうね、たぁ~ちゃんは着物をもっていないので、母さん、古着を買ってあげて」
「そうだね、そうしょうね」
「さあ、店じまいとしょう。帰ったら、おっとうもきっと驚くと思うよ」
三人はあとかたずけをして、荷車に空になった籠、売り台を積み込み、古着屋のある町の中心地に向かった。そこは大店の生糸問屋、酒造問屋、呉服店、両替商が軒をつながる大路であった。
荷車が堀を渡ろうとした時である。突然、太郎が引いていた荷車の手を離し引っ張り棒を下に置いた。しげとゆうびっくりして立ち止まった。
太郎が橋の反対側に飛ぶような速さで走った。しげとゆうはあけにとられて、呆然と橋の反対側をながめた。
突然、馬の大きくいななく声、どど、どど、というしずめのごう音が近づいてきた。
両替商からこの家の幼い娘がよろよろ出て、道の中央で立ち止まってしまった。
暴れ馬が疾走し、暴走、すぐ前までせまってきた。店の主人が大声をあげながら飛び出してきた。
「暴れ馬だ!暴れ馬だ!危ない!誰か娘を助けくれ!たのむ!」と怒鳴り声があがった。
その時である。疾風のように一人の若者が飛び出してきて暴れ馬に、ヒラリと飛び乗った。ど、ど、どと地面をけずる音。
危機一髪。娘をよけて馬は止まった。
娘はケガ一つなかった。
主人が飛んできた。
「娘が助かった! 助かった。有難い。あなた様は娘の命の恩人です」
ふるえる娘を抱きながら、その家の主人は地面に手をついた。
そこえ、しげとゆうが息を切らして飛びこんできた。
「太郎、どうしたの」 「何があったの~」
「たぁ~ちゃん、どうして、馬なんかに、乗っているの・・・」
その家の主人が娘を抱きながら、しげとゆうの、もとにやって来た。
「私はすぐそこで、商いをいたしおります、両替商の相模屋洋輔でございます。この方に娘が危ないところを、助けていただきました」
「本当にありがとうございます」「この方は娘の命の恩人です」
「どちらの、何という方ですか?」
しげとゆうは顔を見回しながら、驚いて、声もなかった。
そこえ馬の上から、ヒラリと太郎が飛びおりて、暴れ馬の手綱を道脇の水飲び場の柱に結び、ふたりの前に立った。すると、道路の真ん中を若侍と中間が真っ青になって駆けてきた。つながれている馬をみて、ポカ~ンとして座りこんだ。
両替商の相模屋洋輔が大きな声で。
「この暴れ馬はあなた様のものですか!」
若侍「 さよう、当家の馬じゃ」
「 なんと言う、ことか!、もう少しで、わたしの娘を跳ね殺すところじゃつた!」
「なんと、さようか・・相すまぬ。許してくれ。せっしゃの落度じゃ」
「して、娘御は無事か・・」
「 ここにいる、太郎様という御仁が、馬を止め、無事、娘を救ってくだされた」
「礼を言うなら、この太郎様に申しなされ」
若侍と中間は太郎のむき方を向き変えて、正座し深ぶかく、頭を下げた。
「 危ないところを、お助けいただきまして、誠にありがとうござる。心より礼を申す。」
「せっしや、小田原山中藩、勘定奉行愛甲 朱里配下、愛甲 一左と申します。この度の働きを殿に言上し、必ず、改めてお礼に参上、仕る」
「どうか、よしなに、お願いいたします」
「 相模屋殿、どうか許してくだされ、このとうりでござる」
「愛甲殿、お手をあげなされ。お侍様に手をつかれたら、水に流すしかありません。」
「それに、勘定奉行愛甲 朱里様には、日頃から目にかけていただいております。お手をおあげ下され」
「しかし、どうして、馬が暴れたのですか?」
若侍「 当家の若君を乗せて、そこの辻まで来たとき、突然、二匹の犬が飛びでしてきて、吠えたてられ、馬は驚いて、若君を振り落として疾走した」
「あっと、いう間の出来事で防ぎようがなかった」
「誠に、面目ないしだいじゃ」
若侍と中間はつながれていた馬の手綱を解き、来たほうこうにトボトボ馬を引いていった。
二人を見送りながら、しげとゆうは、太郎に話かけた。
「太郎、どうして、暴れ馬が来るとわかったの?」
「たぁ~ちゃんがいきなり、走りだしたから、何が起きたのか皆目、解らなかった・・」
「本当にびっくりして、心の臓が止まりそうだったわ」
相模屋洋輔が暴れ馬、娘を危ないところから救ってもらった、いきさつを話した。そして声をかけた。
「太郎様と申しますか。どちらからこられましたか」
しげ「 はぁ、ご挨拶を申しあげますだ。厚木村の農家、どん平の家内、しげと申します。ここにいるのが、娘のゆう、こちに立っているのが「太郎」でがざぇますじゃ」
「町の市場で、相模川でとれた、魚や畑の野菜を商いにまいりましただ」
「太郎の商いのおかげで、もちこんだ物が全て売れ切れ、早めに店じまいして、太郎に古着などを買うて帰ろうとして、こちらに通りかかったところでございますだ」
「はぁ、さようでございましたか」
相模屋洋輔はニコニコ笑いながら。
「 はぁ、太郎様。いい若者でございまするな」
「さあ、さ、手前どもの店は、目の前でございます。どうぞ、お立ちより下さい。太郎様に御礼を申しあげたい。どうぞ、どうぞ」
しげとゆうは、はて、どうしたものか考えたが、誘いに応じて、相模屋洋輔の後について店に入った。
さすが、大店、おおぜいの使用人、お客様がいて、ごったがえしていた。
「お客さまがたを客間に、お通ししなされ」
この店の番頭さんの案内で奥の客間にとうされた。
ゆうは、太郎が人助けをしたのを喜んだが、太郎が何か秘密みたいな何かがあるように感じていた。
「太郎さん、あなたはいったい、どこから来たの・・・」
「あなたは、誰なの・・・」と心の中でつぶやいていた。


(4へつづく)



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